第4話 戦う美少女は…… その7

「たっだいま~~~~~」

 クエストでクタクタになった俺は這う這うの体ほうほうのていで泊っている『怠け者の墓穴』に戻ってきた。

「お帰りなさ~~い」

 すっごい美少女に出迎えられた。

「…………お孫さん?」

 ホールのカウンター席に座りマスターのおっちゃんに訊ねると。

「…………嫁だよ」

「…………おっちゃん、嫁何人いるんだよ」

「…………女は1日あれば化けるんだよ」

「ふぅ~~ん…………って、変わりすぎじゃない⁉」

「ワシだっていまだに信じられんわい」

 まぁ世の中には信じたくない変態も居るんだし、信じられない変態もあったとしてもおかしくはない。

 ちなみに、この場合の変態とは蝶の幼虫→蛹、蛹→成虫という変化のことを言う。これは仏教で蝶の生態を研究して、その神秘を変態と呼んでいたものが、後の生物学に使われたのだ。

 そしてそれがとある小説で新しい性癖に目覚めることを蝶の羽化に例えて変態と表現したら、定着して変態は変態と呼ばれるようになり、海外から日本のエロアニメを「HENNTAI」と呼ばれるようになり世界に広まっちまった。

 今日1日を振り返ったら変態に始まり変態に終わった。タイトルを付けるなら「戦う美少女は変態たちの悪夢を見るか」ってところか。

「—————ないわぁ~~~」

「なかなかヘビーな1日だったみたいじゃねぇか」

「ヘビー、重いと言うかむしろ泥沼にはまり込むようなひどさだった」

「そうかい。抜け出せそうか?」

「抜けれなければ死ぬだけだ。俺は腐りたくない」

「そうかい、クックックッ」

「ニヒルに笑うんじゃねぇよ」

 俺はほっぺたをカウンターに付けていたけど、体を起こしておっちゃんが注いでくれたグラスをイッキに煽った。

「ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 喉を流れる液体が粘膜を焼いていく。

 鼻から息を吐き出すと気化したアルコールが抜けていく。

「カッ~~~~~~、もう一杯」

「ほらよ」

 つまみにドライフルーツをかじっていると。

「それで稼ぎの方は?」

「ん」

 俺はカウンターに5日分の宿泊費を置く。

「ボチボチってところですわ」

「フッ、毎度あり」

 そうしてしばしグダっていると。

「して、オメェさん相当派手なデビューを果たしたらしいじゃねぇかよぉ、えぇ」

「はぁ?なんのことだ」

「すっとぼけんなって」

 いや、すっとぼけてるわけじゃなくって、本気で心当たりが無いんだけど。

「オメェ市場のガキ共たぶらかしたそうじゃないか」

「はぁぁぁ?」

 本気も本気、真剣で訳が分からない。

「他にもウチの3バカ共がとか」

 それには心当たりがある。たしか「あれがデネブ、アルタイル、ベガ」だったけ?

「ハゲ、チャラ男、モヒカン?」

「ソレな」

 君が指さすバカの大三角形、覚える必要はない。

「あとクリーナーの団長やってる―――」

 クリーナー?はて、なんか聞き覚えがあるけど何だったかな。

「女領主様」

「あっ、あの変態」

 領主ってことはお貴族様ってことだから、アイツしかいない。

「たしかピカチュウとか言った…………って、領主!」

「オメェさん領主様を変態とは怖いもん知らずだな」

 領主?ア・レ、がぁ。領主だってぇ。

 ヤバイ、ヤバいのに目を付けられた。

「怖いよぉ、襲われるぅぅ」

「何をやらかしたんだ?」

「言い寄って来るのをフッた」

「はぁ?何言ってんだ?」

「だから口説いて来たからフッた」

「いや、あのお方が?オメェを口説いたのか?」

「ああ、妹にならないかとか」

 それを聞いておっちゃんは何かを考えるように腕を組んで顎髭をいじり始めた。

「…………う~~~~む。あの人はそんな人じゃなかったが。————しかしストレスで…………」

 ブツブツ言ってるおっちゃんを眺めながら、手酌でグラスにおかわりを注いでいると。


 ピコン。


 通知アイコンが目の前に出てきた。

 ん?通知設定は切っていたはずだが?

 不思議に思いながらタップしてみると。

「…………チップスか」

 チップスとはソシャゲなんかのローディング時間の間に出てくるお助けメモみたいなもんだ。

 カタカナなのは綴りが出てこなかったからじゃないぞ。

 Tipsだろ。…………合ってるよな?

 それによると―――


 一定時間の間に女子力が上がらないと強制的にチャレンジモードに突入します。これによりプレイヤーには【試練】が訪れます。どうか存分に美少女ライフに励んでください。

                by,美女神様


 なっ…………

「なんじゃこりゃあああああああああああああああ!」

「うおっ、どうしたのじゃ突然」

「あっ、な、何でもない」

 チャレンジモードってなんだよ。しかもここにきていきなりチップスとか。おまけに自称が美女神だとかふざけてんのか。

 色々文句を言いたいが、ついにゲームマスターとおぼしきモノからコンタクトを得られた。

 とりあえずこいつはミジンコと呼ぼう。『駄女神』なんて気の利いた呼び方なんてしてあげないんだからね。

 とりあえず―――

「領主様はたぶん神様の悪戯にあったんだよ」

 責任はミジンコに全部押し付けることにした。

 …………だって俺は悪くないし。

 飯食ったら寝る前に色々チェックしておこ。

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美少女になろう。KAWAIIは正義。KAWAIIこそ正義。 軽井 空気 @airiiolove

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