第4話 戦う美少女は…… その6
「う~~~~~~~、お尻いた~~~~~い」
木から落ちてお尻を打った俺は痛みにお尻を撫でる。
「そんなのツバでも付けておけば治るわよ」
「打ち身にツバは効かないんじゃないのかな」
「知らないわよ。試してみなさいよ」
「う~~~~、自分じゃツバ付けれないし…………A君、俺のお尻舐めてくれる?」
「はっ⁉」
「ちょっと、なにジャックにお願いしてんの!」
うーん、この2人はからかうと反応が面白い。これで少しはお尻の痛みもまぎれるというものだ。
この気持ちスーゥとする感覚はまるでバンテリンみたいだ。
その後も何匹かモンスターを倒した。どれも見た目がリアルな蟲だったが、デカいやつばっかだった。
日本にいるのと変わらない蟲もいるのに魔物として襲ってくるのはデカいやつばっかだった。最初に倒したモンスターは普通の蚊だったのにな。
まぁ、蜂はここらでは強い部類なうえにさっきのはタフな個体だったみたいで他のやつはサクサク倒せた。文字通りナイフでサクサクだ。おかげで素材と経験値ががっぽりだ。
「それで目的のバカップルは何処だ?」
「しっ、静かに」
A君が口に指をあてる。…………自分のじゃなくて俺の。
「こらぁ、なに女の子の唇触ってんのよ!」
「ちょっ、サリア落ち着いて。今のは事故で」
「わざとでしょ!どさくさにセクハラしてんじゃないわよ」
「……………………」
「2人共ちょっと静かにしてください」
「…………もうこいつらがバカップルってことで討伐していいんじゃねぇか?」
そんな馬鹿な事言っていたら。
「キュウウウウウウウオオオオオオオオオオオン」
「今のは?」
鳥のような獣のような甲高い鳴き声が聞こえてきた。
「今のがバカップルの鳴き声です」
「…………ケダモノみたいと言うか、まんま獣じゃないのか?」
「何言ってるの、バカップルはモンスターよ」
「…………」
ふむ。
どうやら俺とこの世界には認識の齟齬があるようだ。
今度はどんなクソッタレな展開だ?
パカラッパカラッパカラッパカラッ!
そうこうしてるうちに森の奥から馬の足音が聞こえてきた。
そちらは深井茂美…………もとい、深い茂みになっており、そこを注視していると。
ガサゴソと茂みが揺れている。
居る。
この向こうに目的のバカップル――――青〇カップルじゃない異世界の怪物が居るのだ。どんな不条理が顔を出すのか―――
ヒョコッ。
「…………馬?」
顔を出したのは普通に馬だった。
そう言えば【ファーストファンタジー・オンライン】においては馬では無くてデッカイ鳥の『チョンボ』に乗って移動するはずだった。
じゃぁこの馬は何だ?
そう思って見つめているとヒョコッとその顔の隣に今度は鹿の顔が出てきた。
ちなみにその鹿は奈良の鹿みたいに愛くるしいものじゃなくて、ロシアとか北欧とかの寒い地域に居るようなごっつくて毛深いやつだ。
そんなのが茂みから出てきたのだから面食らった。
だが、現実はもっとひどかった。
「———出てくるぞ」
つばを飲み込むA君は緊張していた。
茂みを揺らして2つの頭は一緒に位置が高くなって行く。
———地球には複数の頭を持つ怪物が存在したらしい。
例えばギリシャ神話の複数の頭を持つ『ケルベロス』『オルトロス』とか、ライオンと山羊と鷹の頭を持つ『キマイラ』なんかが居た。
日本なんかは『八岐大蛇』が有名だろう。
しかし、こんな序盤にそんな怪物が出てくるだろうか。
そう思っているとバカップルがその姿をあらわにした。
「—————————————はっ?」
そいつはまさにバカップルと言うのがお似合いなくらい……馬鹿な姿だった。
頭が2つ、馬の頭と鹿の頭。合わせて馬鹿。そこまではいい。問題は首から下だ。
なんでこいつは首から下が裸の人間なんだよ!これじゃあ被り物系のユーチューバーじゃないか。
こんなんばっかかこの異世界。ゲームマスターは絶対まともな頭してないぞ。そいつは人の心が分からないんだ。
とりあえず。
「—————よし、殺すか」
「おおう、すごい殺気」
なんにしても殺すことに変わりはない。これ以上付き合うのが馬鹿らしいのでさっさと片付けて帰って酒を飲みたい。
お酒に逃げる算段をしていたらRPGのイベントバトルらしくローアングルで決めポーズを決めてきやがる。
「パカラッパカラッパカラッパカラッ!」
「口で言ってやがったのかよ!」
口からヨダレを垂らしてやがるしもうイヤ。せめてもの救いは局部丸出しで馬並みってオチじゃなかったことかな。
これでモザイク必要な状態だったら泣くところだったよ。
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