大人

小淵沢潮

大人

朝、目が覚めると大人になっていた。重い腰を起こし、乾いた喉を潤すために水道の蛇口に手をかける。時計を確認すると午前8時、カーテンを開けると大きな入道雲が広がった。

 髭が生えて肩幅も少しばかりか大きくなっている、しわで醜くなった頬に彼は歓喜して玄関の戸に手をかけた。

 戸を開くと大きな玄関が現れた。玄関を出たはずなのにまた玄関かと彼は疑問に思ったが早く外に出たい気がはやって大して怖がることもなくその大きな戸を開けた。



 また、大きな世界が広がっていた、建物全部が記憶の倍くらいある。彼は大きくなった階段を下りてコンビニへと向かった。

 道中、人をいくつか確認した、彼はその誰もが建物に見合うくらいになっていることに気づく。

 コンビニに着くと彼はすぐさま酒の売り場へと向かい、何本かそれを手に取ってレジに向かった。煙草も買おうと店員に声をかけると怪しい目をしてこちらを視ていた。

 年齢確認できるものはあるかと店員が聞いたが彼は納得できずに抗議した。

 こんな老けた子供がいるか、よく顔を見てみろ、彼は自分の髪をかき上げて店員を睨みつけた。店員は呆れた様相でそれ以上相手にはしてくれなかった。



 彼は結局なにも買うことができないまま当てもなく歩いていた。

 道行く誰かがおもむろにこちらを視て公言する。

「見てみろ、変な男だ」

 男と女の二人組のようだ、男は笑いながら手を叩いている。女もそれに即するように笑っている。

声を聴いてか、何人かが彼に会した、みんな一様に声を上げて笑っている。

 彼は耐えきれなくなった。

 家に戻ろうと帰路に就くと集はあざ笑うかのような声を降ろし「おめでとう」を乗せた。

 彼は急に背丈が伸びていくのを感じた、大きくなっていく、大きくなっていく。彼はうら淋しさにいたたまれなくなった。

 


 道中、子供を見つけた。

 彼は声を上げる、そして愚弄するかのように笑った。

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