第5話 美化語

 美化語は、名詞に「お」「ご」を付けます。「お米」「お料理」「ご祝儀」など。

 中には「お」「ご」の付いた別の語に言い換えるものもあります。腹「おなか」、水「お冷」、めし「ごはん」など。

 ただし、「お」「ご」が付けばすべて美化語というわけではありません。


 相手側の行為や所有物を立てるのであれば「お考え」「お名前」などは尊敬語になります。

 自分側から相手側に行為が向かうのであれば「お見舞い」「ご連絡」は謙譲語Iになります。


 問題は自分側の行為で向かう相手が想定されない場合です。

 たとえば自分の仕事を「お仕事」、自分の休みを「お休み」と表現することは違和感を与えます。「お仕事」や「お休み」は単に美化するのでなく、仕事をする人、休む人を高める尊敬語として受け止められており、自分のことに使うと自分を高めるようになってしまい不適切とされます。

 相手のもの(相手からの手紙や連絡などの相手からのものも含む)においては「お」「ご」を付けても問題はありませんが、自分のものに付けるのが不適切な場合があります。

 自分のものについては相手に向かうものであれば適切です。「(相手への)お知らせ、ご連絡、ご報告」。

 相手に向かうものでない場合、食品関連では慣例的に適切な場合が多い。「お弁当、お茶、お箸」。

 それ以外の場合は不適切です。✕「(自分の)お休み、お荷物、ご予定」。



 なんでもかんでも「お」「ご」を付ければ美化しているというわけではありません。過剰になるとくどい印象を持たれます。

 「お足元にお気をつけてお帰りください」は過剰です。

 最低限述語部分が敬語化されていれば問題ないケースが多いので「足元に気をつけてお帰りください」だけでもじゅうぶんです。



 また、「お(ご)+名詞」ではなく「お(ご)+述語」のなる場合にも誤用があります。

 たとえば「ご活躍していただきたい」「ご出席できますか」は名詞に「ご」を付けている感覚だと思いますが、「活躍する」「出席する」に「ご」が付いているため実際には謙譲語Iの一般形「お(ご)〜する」になっています。また「できる」は「する」の可能形とされています。

 「ご利用されると」なら、尊敬語の一般形「〜れる」を除くと「ご利用する」であり謙譲語Iの一般形「お(ご)〜する」となっていて表現が交錯しています。尊敬表現であれば一般形「お(ご〜になる)」に丁寧語「ます」を加えて「ご利用になりますと」とすれば適切です。



 また、敬語ではありませんが、改まった言葉があります。

 「そっちにお座りください」だと敬っている感じがしませんよね。

 「そちらにお座りください」です。

 このように「そっち」は俗っぽいですが、「そちら」は改まった言葉であることがわかります。

 「きょう・今年・去年」も「本日・本年・昨年」が改まった言葉です。

 主に改まった文章で用いるものですので、こちらも場数を踏むにかぎります。



改まり語の例

 ちょっと・少し ⇒ 少々

 やっぱり ⇒ やはり

 さっき ⇒ 先ほど

 あと ⇒ 後ほど

 この前 ⇒ 先日

 わたし ⇒ わたくし

 うちの店 ⇒ 当店

 もう ⇒ すでに

 わりと ⇒ 比較的

 いいですか ⇒ よろしいでしょうか

 どうですか ⇒ いかがですか




最後に

 今回は五分類のラスト「美化語」について述べました。

 単に「お」「ご」が付けば美化語というものでもありません。

 動作の出し手を立てた「お」「ご」は尊敬語、動作の受け手を立てた「お」「ご」は謙譲語Iと考えましょう。


 これで五分類の説明が終わりました。

 あとは敬語の使い方についての小話が続きます。




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