どんでん返し
ボウガ
第1話
地方に住む女性、Aさんには同性の親友Bがいた。大学の頃からの知り合いで、内気な本人に変わって、色々世話をしてくれた。共通の友達を増やしてくれたり、よく気にかけてくれたり励ましてくれた。おかげで大学生活のみならず、就職してからも、良い生活ができていた。
偶然にも同じ企業に内定をもらい就職してからは、二人の仲はさらによくなっていった。そんな幸福な生活が3年ほど続いた後、C、上司にあたる男性から目を付けられるようになった。心配されないようにBには話さずにいたが、日に日に嫌がらせや、パワハラなどがひどくなっていく。目は虚ろになり、周囲からも心配されるようになった。近くの別の会社に恋人になりかけた人もいたのだが、彼もそんな様子を心配していたし、無理せず職場を変えるように勧められた。それまでよかった成績もぐんぐんと落ち込んで平均以下になっていく。
ついに会社に行くたびに吐き気や動悸がすごくなり、やめようかと辞表を提出したが断られ、ついに耐えられなくなって、Bにも相談したが、Bは“あなたの味方は多いから大丈夫、逆に皆で嫌がらせをして、必ずあいつをやめさせよう”と色々協力をして手を回してくれることになった。
これで安心だ。と思ったが、たしかに徐々に嫌がらせは収まり始めたのだが、今までのトラウマがあり、Aは、Bが“もう少し”と繰り返すうちに耐えられなくなり、ある方法でCを苦しめることにした。というのが、人を呪うための神社を訪ね、半信半疑で、Cが死ぬことを念じたのだった。
すると、その神社で、奇妙なものをみた。敷地に入るなりCが様々な姿で苦しみ悶える半透明の姿があちこちに現れるのが見て取れた。いい気味だ。順風満帆な私の人生を邪魔しやがって。Bとの関係だって!!これが現実になるのかそうでないのかにかかわらずAさんは胸がすっとするのを感じた。
「これで、私は自由になれる!!」
呪いの効能があるという神像の前で、呪いの札に憎い相手Cの名前をかき、そのそばの札かけにたてかけ、膝を降し手をたたき祈願をすると、耳元で聞こえた気がした。
「助けてくれええ」
この呪いの神社は、呪うだけでなく憎い相手を最も恐ろしい地獄の鬼に無残な方法で殺す事ができるという。
“嘘でもいい、今気が楽になれば”
ところが、しばらくしてCは本当にあっけなくなくなった。酔っぱらってビルの屋上から飛び降りたらしい。あちこちにぶつかって死体は無残な姿だったという。
いい気味だ。だが奇妙な不安感もあった。Aさんが呪いをかけたとき、あの時Cの悲鳴にまじって、ほかの複数人の男女の声も聞こえた気がしたからだ。
数週間後、その現実のものとなった。会社にも警察がきたが、結局事件性はないとされた。というのも、また別の人間が亡くなったのだ。……奇妙にもAさんの親友Bが、Cと同じ方法同じビルから飛び降り、酔っぱらった状態で亡くなった。
《なんでBが!!》
Aはひどく落ち込んだ、自分はいつのまにかBすらも憎んでいたのかと。しばらく会社を休んだが、ある時、神社を訪ねて神主にきいた。
《この寺は無関係な人は殺さない》
憎らしくおもったが、そう返答があったため、会社にもどってもう一度情報を整理することにした。
すると、AをいじめていたのはどうやらCだけではなく他の男女数人が嫌がらせをしていたらしい事に気づく、考えればCに目をつけられてから、成績が不振だったり小さなミスが増えていたのだ。
それだけではなく、詳しく調べるとBの最も親しい人間たちから、こんな話をきいた。どうやら周囲の人間によると優しくしてくれ、仲間を増やしてくれた親友Bこそが、その恋人、職場の人間や、Cに私に嫌がらせするようにそそのかしていたらしいことがわかる。いわく、卒業してから仕事のストレスや、自分より成績を上げていくAへの不満を善く語る事が多かったらしく
「陰キャなのに、私が目をかけてやったから今があるのに、最近自分ひとりで周囲と仲良くやれてると思って調子に乗っている」
といっていたらしい。
Aは暫く気を病んでいたが、その職場をやめしばらくすると、新天地で心機一転新しい人生を始めたという。
後から気付いたAさんだったが、あの神社で願い事をしたとき、自分を苦しめるものを殺してと願ったとき、Bさんの死にかかわるある心当たりがあった。
“私を苦しめる、いじめるものを殺して”
そういったとき、耳元で、Cの悲鳴にまじって、懐かしい声がひびいたきがした、そう、Bの声も響いていたのだ。その後も立て続けにその職場では、社員が不審死を遂げたが、もはやその場をさったAさんにとっては知った事ではなかった。
どんでん返し ボウガ @yumieimaru
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