底辺のダンジョン配信者やってる女子高生ですが、きれいなお姉さんを助けたらいつの間にか人気配信者に!?〜私のスキル『広域化』ってぶっ壊れなんですか?〜
最終話 底辺の配信者やってた女子高生ですが、きれいなお姉さんを助けたらいつのまにか人気配信者になりました!
その後の話
最終話 底辺の配信者やってた女子高生ですが、きれいなお姉さんを助けたらいつのまにか人気配信者になりました!
カンナが高校を卒業しておよそ半年。スキル覚醒者は既に日本だけでも推定数千人に登ろうとしていた。
コアペロの条件がかなり分かってきて、それなりの規模のダンジョンのコアであれば数時間で覚醒できるという事がいつのまにか知れ渡ったことなども大きい。さらに最近では企業が大学と協力してコアから覚醒に必要な成分を抽出する研究なども計画され始めている。
一方で政府や公安などが懸念していたスキルによる大規模な犯罪、テロなどは今のところ発生していない。個人の覚醒者による窃盗や傷害などはポツリポツリと起きているが、まあ対応可能な範囲内だ。いまのところは情報開示当初の初動が功を奏しているといった感じである。
とはいえ油断はできない。本当の巨悪は、焦らず少しずつ力を蓄えている。いつかそんな者達が世間に悪意をばら撒いた時には、柚子缶も巻き込まれないとも限らないのだ。
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チャンネル登録者数100万人を達成した柚子缶は、新たに1000万人という目標を定めてそれに向かって配信を続けていた。
メインは探索動画だし、最近はボス討伐動画も増えている。ごくたまに女子四人の雑談配信なども行ってみたりと視聴者を飽きさせないように色々と工夫している。
「さて、今日は仙台市にきております。今日挑むのはダンジョンではなく……こちらです、じゃん!」
イヨがカメラを回して建物を写す。
「高原、これ配信するなってユズキちゃん言ってたでしょ?」
「そうだけど、一応あとで配信できるようにカメラだけ回しておこうかなって。動画編集して見せたらもしかしたら気が変わるかもだし」
「あの様子だと変わらないと思うけど。かなりはっきり拒絶してたじゃん」
「カンナさんは別に構わないよって感じだったからそっちから上手く説得できないものか」
「カンナちゃんも「ユズキが良いならね」って言ってただけだから別に協力的なわけじゃないと思うんだけどなー」
「まあとりあえずカンナさんの控え室から突撃しますか!」
「カメラ構えたまま行くの? お前すげーな」
カメラを構えてイヨは目の前の建物――結婚式場に入っていく。
一応新婦の控え室の前でノックをするイヨ。
「カンナさん、入っていい?」
「イヨさん? うん、大丈夫だよ」
中に入ると純白のドレスに身を包んだカンナいた。恥ずかしそうにカメラの方を見る。
「本当に式の動画を配信するの?」
「ユズキさんの許可が降りればね」
「カンナちゃん、かわいい! お姫様みたいだね! こんなかわいい子と結婚できるユズキちゃんは幸せ者だね!」
マフユはイヨの事など気にせずにカンナの姿をベタ褒めする。この日のためにダイエットをしたり忙しい合間を縫ってブライダルエステに通ったりと努力をしてきたカンナとしては賞賛されるのは素直に嬉しい。
「そ、そんなに褒められたら照れちゃうな……」
「うんうん、自信持っていいよ! じゃあ私たちは参列席に並んでるね。高原、行くよ」
「はーい、じゃあカンナさんまた後で」
撮るものを撮ってさっさと出ていく二人をカンナは手を振り見送った。
「カンナもそろそろ行こうか」
「お母さん、もうそんな時間?」
「うん。ユズキちゃんも待ってるわよ」
カンナママと共に天蔵家の控え室に向かう。扉を開けたカンナの目に入ってきたのは、これまた純白のドレスに身を包み顔を紅くするユズキの姿だった。
「ユズキ、きれい……」
「カンナこそ、とってもかわいいわよ」
ポーッとして見つめ合う二人。周りがわざとらしく咳き込んだ事で我に返る。
それぞれの親族に挨拶をしたらいよいよ挙式だ。
「新婦達の入場です。みなさま拍手でお迎えください。」
司会の合図に合わせて並んで入場するカンナとユズキ。家族や友人達が二人を祝福してくれている。
両親に親戚、その後ろには新婦友人としてイヨとマフユ、
「二人ともキレイ!」
「おめでとう!」
「お幸せに!」
神父の前に立って改めて愛を誓った二人。誓いのキスをするのは恥ずかしかったけれど、無事に式を終える事が出来た。
披露宴はそんなに大層なものにするつもりはなかったのだが、ユズキの父が大企業の社長をやっている関係でどうしても外せない義理というものがあり最低限のゲストを招待した時点でだいぶユズキ側の人数が増えてしまった。そこで探索者関連の知り合いはカンナ側のゲストとして招待をしてなんとか人数のバランスをとる。
「それでも私の招待客が多くなっちゃって……」
「まあ仕方ないよ。それにみんな楽しそうにしてくれてるし」
それこそ3桁に届こうかというゲスト達はみな披露宴を楽しんでくれている。
余興としてイヨが作成した「柚子缶探索史」のムービーが流れると会場は大いに湧き上がった。最後にドラゴン討伐時のキスシーンで締めるのはやり過ぎだとユズキは思ったけれど、そこが最高に盛り上がった事を考えるとやはりエンターテイナーとしてはイヨには敵わないなと思った。
さらにマフユとリュウキ、アリスが協力して『
こういった余興の数々は流石はトップ探索者である柚子缶の二人の披露宴だとゲスト達は大いに満足した。
最後に新婦であるカンナとユズキが挨拶をして、披露宴は終幕となる。
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「ふぅ、なんとか終わったね」
「お疲れさま。トラブルが無くて良かったわ」
若い出席者が中心となった二次会も無事に終わり招待客を見送ったあと、式場となったホテルに戻ったカンナとユズキ。長い一日もこれにて終幕、あとは汗を流して眠るだけである。
「せっかく豪華なお風呂がついてる部屋なんだし、一緒に入ろうか? 湯船に二人で入っても余裕がありそうなくらい大きいよ」
「じゃあお湯張って準備しましょうか」
「はーい」
良い返事をして給湯器を操作するカンナ。ディスプレイにはお湯が沸くまで20分と表示された。
「湯船が大きい分、沸くまでに時間がかかるね」
「じゃあそれまでちょっと休憩っと」
ユズキはふかふかのベッドにゴロンと身を投げる。
「ドレス、皺になっちゃうよ?」
「それは困るなぁ」
そう言いながらもベッドから起きないユズキ。ユズキにしては珍しい姿だが、彼女も探索者業で忙しい中で今日の準備のために連日夜更かししていたので、無事に終わった安心感もあり少しだけ気を抜いているのだろう。
気持ちよさそうに薄く目を閉じるユズキ。まだ落としていないお化粧と丁寧に編んだ髪、純白のドレスで真っ白なシーツで横たわる姿にカンナはなんだかドキドキする。
そんな彼女にそっと寄り添って頬に手を添えると、ユズキはゆっくりと目を開ける。
「……お化粧、付いちゃうよ」
「このあとお風呂に入るし」
「じゃあカンナも横になる?」
「私まで横になったらこのまま寝ちゃいそう。お風呂は入らないとだし」
「それもそっか」
「ユズキは寝てていいよ。お風呂沸いたら起こしてあげる」
「カンナがえっちな手で触るから目が覚めちゃったんだけど」
そういって頬に添えたカンナの手に、自分の手を重ねるユズキ。
「ええ……さすがにそういうつもりで触れたんじゃ無いんだけど」
「そういうつもりには、なってくれないの?」
「……バカ」
お風呂から上がりバスローブを身を包んだ2人。身体は疲れているがなんだか目が冴えてしまったので改めてベッドでゴロゴロしつつ取り留めのない会話を交わす。
カンナは仰向けになって左手を天井に伸ばした。その薬指には結婚式で着けた真新しい指輪が光っている。
「私達、結婚しちゃったんだよね」
「そうだね。これからもよろしくね」
「こちらこそ。……なんか不思議な気分。ちょうど3年前のあの日にダンジョンの中で初めてユズキに会った時はこんな風になるなんて全然考えてもみなかったんだよ?」
「それは私も同じよ。……私たちが出会った日を記念日にしようって言って式も籍を入れるのも今日にしたけど、あれから3年かぁ。なんだかあっという間だった気もするし、でもカンナとはもっとずっと前から一緒にいるような気もするし、なんだか不思議な感覚よね」
「まだ私達って出会って3年しか経ってないんだよね。この先100年一緒にいると考えると、まだまだ2人の歴史としては最初の方なんだよね」
「100年は生きられるかしら……?」
「ふふ、90年でもいいけど、最期にもっと一緒に居たかったって後悔しないようにずっと仲良くしてようね」
楽しそうに笑うカンナにつられてユズキも笑った。
「そうね。カンナが私に飽きて、好きじゃなくなったりしなければ大丈夫かな」
「ユズキこそずっと私のこと好きでいてくれる?」
「それは勿論。出会った時からカンナのことはずっと大好きだから」
「出会った時からなの?」
「……あ」
しまったと言う顔をするユズキ。結婚をした事で幸せな気持ちに溢れて、一生秘密にしておこうと思っていたのに口を滑らせてしまった。
「なになに? ユズキっていつから私のことを好きになったのか、ずっと教えてくれなかったけど、実は一目惚れだったってことなの?」
嬉しそうに聞いてくるカンナ。ユズキは布団を被って逃げることにした。
「内緒っ!」
「えー、教えてよー。夫婦で隠し事は良くないよー?」
「だって恥ずかしいじゃない」
「誰にも言わないから、ね?」
結局このあとカンナのかわいい追及に折れてユズキは全て話すことになってしまう。
……パーティを追放されて半ばヤケクソに入ったダンジョンでモンスターに襲われて絶望しかけていた時に、危険を顧みずに助けに来てくれたカンナに、振り返ってみたらあの時一目で恋に堕ちていたなんて、今さら言うには恥ずかしすぎるからずっと秘密にしておきたかったのに。
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翌朝、少し遅めの朝食をとったあとホテルをチェックアウトする。
新婚旅行はもう少し時間に余裕が出来てからということで、明日からはまた探索者業を再開予定なのでユズキの地元であるこの仙台市から、東京まで帰る予定である。
ホテルから出ると、イヨとマフユ待っていた。
「お、来た来た」
「もういいの?」
「うん、お母さんはユズキのご家族の案内で仙台観光するって言ってたから帰りは別行動。私達はこのまま東京の事務所に帰って明日の探索の準備だね」
「オッケー、じゃあさっさと駅まで移動しますか。早く新幹線に乗って一眠りしたいわ」
「イヨ、寝不足なの?」
「ちょっとね」
「高原は明け方まで昨日のビデオの編集してたみたいだからね」
「そうなの? チャンネルに投稿も出来ないのにご苦労さま」
「えー、やっぱりダメ? 撮影も編集も上手くいったと思うんだけどな」
「だって恥ずかしいじゃない。それにカンナはかわいかったからまだしも、私のドレス姿なんて需要無いだろうし」
「そんなことはないって!」
「うん、ユズキも世界一綺麗だったよ!」
まさかのカンナからもよく分からない反論が飛ぶ。
「そうそう、2人のてぇてぇな式なんて需要が無いどころか需要しか無いって」
「えー、でもやっぱり恥ずかしいし」
「ユズキちゃん、とりあえず高原が作った動画を見てあげたら? 配信するしないはそのあと決めればいいんじゃないかな」
「マフユまで……じゃあ帰りの新幹線で見ておくわ」
「やった! よろしくおねがいします!」
「じゃあそろそろ駅に向かおうか」
「はーい」
駅に向かうため、タクシー乗り場に移動する一行。
「そういえばカンナちゃんとユズキちゃんって昨日籍入れたんだよね?」
「うん。もう正式に家族になったよ」
「結局どっちの名字にすることにしたの?」
「ふふふ、これ見て」
スーツケースに付けているタグを指す。そこには既に新しい名前が書かれていた。
「あ、そっちにしたんだ?」
「うん、2人で相談してね」
「見せて見せて!」
イヨも興味津々に覗き込んできた。
「こっちかー。新しい名前はもう慣れた?」
「昨日の今日で慣れるわけ無いでしょ」
「じゃあさ、名前呼ぶからはい! って返事してよ」
「今ここで!?」
「こういうのは早めに慣れないと」
「じゃあ私が呼ぶよ。コホン、――日出ユズキさん」
嬉しそうに愛する人の名前を呼ぶカンナ。ユズキは照れながらもはい、と返事をした。
完
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※作者より
以上を持ちまして、カンナとユズキの物語は本編完結とさせて頂きます。8ヶ月ちょっとの連載期間、応援頂きましてありがとうございました!
これで終わりかよ!? 4章のラストではかなり大風呂敷を広げておいてどうするんだ!? アメリカ(?)の刺客や悪の覚醒者と戦う展開は!? そんな風に思われている方もいるかも知れませんし、この物語が好きになっていただいて続きを読みたいと思って頂けているのであれば作者冥利に尽きます。
ただ、連載開始当初から「時系列は高校卒業まで」「チャンネル登録者100万人(作者の考えるトップ配信者)」「カンナとユズキの結婚」これをゴールにしようと思っていました。
これ以上続けると「ダンジョン配信者やってる【女子高生】」じゃなくなっちゃうし……(とっくに「底辺」ではなくなってましたけど笑)
最初はもっと探索メインの話にする予定だったのですが書いていくうちにどんどん話のスケールが大きくなって収拾つくのかなと正直不安になりながらも、なんとなく良い感じに着地できたかなと思っています。多少?強引な部分や多いに拙い部分もありますが、そこは目を瞑っていただけると幸いです。笑
ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。イイねをしてくれた方、感想をくれた方、なんとギフトまで送って頂いた方、本当に嬉しかったです。無事に完結させることができたのは何よりこういった直接の応援に応えたい! と思えたからです。もちろん、読んでくれた全ての読者様に心から感謝をしております。
広げた風呂敷はそのうち後日談としてその後の柚子缶の活躍を描くための下地のつもりではいますので、いつかカンナ達の活躍がまた見られる日をほんのりと楽しみにしていて下さい。
それではまたいつか、お会いできる時を楽しみに。
底辺のダンジョン配信者やってる女子高生ですが、きれいなお姉さんを助けたらいつの間にか人気配信者に!?〜私のスキル『広域化』ってぶっ壊れなんですか?〜 かおぴこ @kaopicolin
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