忘れられた人
忘れられた人は、日々をこの部屋で過ごす。
何もない四角い部屋で。
出口はなく、白く囲われている。
そこでその人は体操座りをして過ごす。
とある研究者が"食事も睡眠もしなくて良い安全な部屋"を作った。その実験の参加者として、その人はここに望んで入った。
「どうせ他人に忘れられてしまうくらいなら、自分は忘れないように、これ以上何も覚えたくない。そうすれば忘れないと思うから。」
というのが志望した理由だった。
研究者にとって理由はどうでもいいので、すぐにその人を部屋に入れた。だが研究期間の間に核戦争が起こって、世界には人間が一人もいなくなった。それでもこの部屋は安全だった。
その人は今日も体操座りで一日を過ごす。楽しい思い出を何度も何度も何度も何度も思い出す。
その人は笑っていた。
空想日記 @slwisdan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。空想日記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます