横浜異都市、研究 誰かのスクラップ その2
●異都市の構造(Naturwissenshaft No.789 日本語版)
はじめに
「トロイの木馬」が伝説ではなく実存した街であったことであると証明されて現在、あらたな都市の疑問が浮上している。ヨーロッパを中心として、存在が確認されている5つの異都市の存在だ。その都市については伝説どころか誰もの記憶から忘れられていたといっても過言ではない。それに加えて、各種文書や芸術なども残っていない。これが「トロイの木馬」と同じような古い話ならば納得できるのだが、100年かそこらの出来事だ。研究分野によっては最近のことと言えるのに、何も残っていないのは不可思議であるといえるのだ。
発端は日本の菱臣のがれきと思われるものの発見である。そのあと、続々、がれきが発見されたのだ。近くにあった大きな津波で流されたものではなく、古いものだと判明した。そのあとから、日本のみならず、ヨーロッパやアメリカにあった都市のことが話題になったのだ。ただ、当時を見た人はほぼ皆無だ。かろうじて生きていた人でも、100歳前後という高齢さが聞き取ることも難しくしている。今のように情報伝達や移動手段が発達していないため、街の近くに住んでいない限りそれを目撃したという証言は難しいだろう。
また、情報として残っていないのが調査を遅くさせている。もちろん、ローマ時代の調査だって文献がすべて残っているわけではないから、各種資料をあたり、結びつけて考えていくことが求められる。そう考えれば異都市についてもそれでできそうなものだ。だが、文学も絵画も、たった100年前のことなのに公的文書も一切残っていない。商業取引の現場であっても、何も残っていない。それに、建っていたとされるあたりにも何も残っていない。かろうじて菱臣ががれきという形で存在をあらわにした。
各種不可思議な点が多い異都市についてであるが、今回は、形状についての調査結果をここにまとめた。基本的には聞いたものである。その全容は怪しいものである。それこそ、ファンタジーやSFだと言われると納得できるかもしれない。
外観および内観
ベルリンにあった異都市は一キロ×二キロほどの長方形をしていたという。城壁の高さは約二十メートルだったと言われている。一定間隔で大通りが走り、細い路地に分かれるという計算して作られたことが明らかな街の作りだったという。地図を見ると住所はわかりやすいが、意外と迷いやすいという。どこも同じような角であるため、きちんと見て歩かないとならないという。建物はレンガや石で作ったものではなく、コンテナのようなものを組み合わせて作る形だったという。ユニットを組み合わせ商業や工業、居住区などのニーズにこたえるようにして作られていったという。全体的に無機質な雰囲気もあるが、計画して住みやすい街にするという心意気はあったという。
ロンドン異都市はロンドンの郊外にあったらしいが、外見の情報なども出てこない。ただ、近代化のおり霧が発生したのを避けるように作られたと言われている。異都市の中でも最も古い建築であったことは間違いないようだった。
パリ異都市はベルサイユ宮殿と対極となる位置に作られていたという。大きさは三キロの一片を直径とした半円だったという。円で言うならば中心のあたりに中央入り口があり、そこから放射線状に大きな道があったという。その道と道をつなぐように道があったという。城壁の高さは不明だ。街の中の建築物はレンガや石を使った物が主体。また、原動力として蒸気を使う大型機械も多数あったと言われている。それを用いて、飛行船の開発などをしていたといわれている。
横浜異都市「菱臣」
唯一名前が明確にわかっているうえ、生活痕を示す物品が現れた。器や金属の製品であり、特段不思議なものではなかった。それでも、世界各地で見つかったがれきについては、建物の部分であることは判明している。鉄骨を使って作られていること伝わっている。鉄骨の部分と思われるものが各地に流された破片あったからだ。
街の形状はPの字型というものだ。長方形と円形を組み合わた建物だったという。陸地に面しているところが2キロ以上あり、円は直径1.5キロほどと言われている。面しているところが2キロ以上というあいまいなのは、円形の部分とどう組み合わさっていたかによるという。現在のところ、JR桜木町駅からみなとみらい線元町・中華街駅くらいまではあったとされているので、おおよそ想像はできよう。
城壁都市ではなく、街自体が建物だったという。十階建てであり、上に貴族が住み、下の方は工場があったという。最上階が貴族なのは、外からの明かりを得ることができること、空気が入りやすいといった点があるだろう。また、建物内は電気による明かりがあった。それも、朝昼晩で光の強さが違ったという。出入口は一階部分だけでなく、三階などにもあったという。横浜の丘があり、そこから橋があったという。港としても機能しており、海に面しているところと空に面しているところを利用していたという。海の港に関しては、上流階級の者が利用できるところと、貿易港として使えるところで別れていた。
人口密度がなればなるほど多い。工場のある階は劣悪な環境でことが想像できる。
文明・文化
電気や蒸気、ガスの利用は1920年代ならばありうる。異都市については、異様に発展していたという形跡をうかがわせる。特に、菱臣については八幡製鉄所の稼働後から作られており、まさに西方列強に追いつけの勢いで作られている。
●文学・芸術作品
明治から昭和初期に活躍した文壇の人々、俳句や短歌、詩など各種文学において、菱臣について取り上げているもが現存していない。取り扱いがタブー視されており、検閲がされてしまったのか、それとも、すでに記憶から消えていたのか何かわからない。
関東大震災やスペイン風邪の記録など残している人もいるにも関わらず、最先端かつ世界の入り口でもあるような菱臣を一切扱わないのが不思議であるのだ。
また、それは他の国々にも言えることだ。日本が中国について記載していることがあるように、その逆もありうる。しかし、この街に関しては、中国だろうが、英国だろうが、何も残っていないのだ。
絵画や彫刻などにおいてもそれらが残っているかというと、ないのだ。
題材として現在考えるならば、「バベルの塔」を彷彿とさせるといっても過言ではない。それでも、何にも使われていない。ならば、そのころに書かれたバベルの塔を題材としたものが実は、どこかの都市かもしれないという研究も考えうる。有名な画家以外が書いている可能性だってある。
そうなると、文章もしかり。
どこから情報が出てくるか今のところはわからない。
新たな情報が出てくるのを祈るしかないのだろうか?
異都市奇譚 横浜物語 小道けいな @konokomichi
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