異都市奇譚 横浜物語

小道けいな

横浜異都市、研究 誰かのスクラップ その1

●初めに

 まず、私が情報に着目したのは、不可解な点が多すぎるという事からだった。

 一番の大きな疑問点は「そのような街が本当にあったか」ということ。

 その情報がこれまであいまいであり、絵画や小説などにも残っていないのがおかしい。

 文豪と呼ばれた人たちは関東大震災の様子を書いたり、スペイン風邪の有様を書いたりしている。それならば、東洋一、世界一と言われた規模のその街があれば、誰かしら書き残していてもおかしくない。

 さらに、日本だけでなく世界でも同じ現象があるということ。


 菱臣(ひしおみ)、という街が、神奈川県横浜市にあったというのを。

 JR桜木町駅からみなとみらい線元町中華街の方面の海上にあった街。

 距離にすると、二キロ以上の幅があり、メーンのところは直径一.五キロの十階建てだったという。海からの港だけでなく、飛行船を用いた空からの港もあったという。


 関東大震災や空襲があったとしても、全記録がないのはおかしい。

 ましてや、誰も記憶していないのもおかしい。

 また、最近になり、情報が集まりだしたのもおかしい。


 だから、私は情報を集め、記録した。

 新聞記事などだけでなく、記者や宮司などからの情報の聞き書きも含んでいる。


●私にとっての第一報

 横浜に街? MM地区でがれき見つかる

 ▽月×日、パシフィコ横浜拡張工事において、古い陶器や金属のようなものが発見されたと報告があった。そこに遺跡があるわけではないとしても、古いものが発見されたことは間違いない。そのため、その分析を行うこととなった。(神奈朝新聞・朝刊、十四版)


 大正浪漫、街があった? 横浜MM地区

 パシフィコ横浜拡張工事で見つかった陶器や金属のようなものについて、明治から大正期の物だと判明した。関東大震災で大きな被害を受けた際に残っただろうとされる。現代になって発見された理由は現在調査中だという。(神奈朝新聞・朝刊、十四版△)


 カナダからも発見 横浜、がれきか

 ▽月×日。パシフィコ横浜拡張工事において発見された陶器など以外に、カナダやチリなど多くの国々からがれきが発見されたという報告が日本に向けてなされた。東日本大震災における甚大な被害のあった影響で流れて来たがれきだとされていた。明治から大正時代に作られたものらしいものが発見されたという報告から、各国も調査したという。その結果、東日本大震災よりも前に流れてきていたはずのものが多数発見される。

 しかし、どの国においても、そのようなものがあったという認識はされていなかった。その上、ヨーロッパやアメリカに巨大な街があったという言い出す人々が現れた。

 フェイクニュースという噂もあるため、各国が注意深く調査をしているという。(ヨコハマ・ウイークリー 英語版翻訳)


 他の全国紙や地方紙、海外の新聞報道の切り抜きは補注にて添付。なお、集められるだけであったので、抜けているものもあると考えられる。


 新聞記事やテレビ報道、ネットの情報を総合すると次のようになる。


 パシフィコ横浜の拡張工事をしているところの土の中から、陶器や鉄の道具のようなものが見つかった。それと同時に、海を介し日本とつながりが深いところに集まっているがれきなどの中に、出土されたものと同じ時期のがれきが多く発見されたということだった。

 ただ、埋め立て地であるため、発掘というのも不自然である。

 もちろん、海の中だって地面があるのだから、そこを掘って出て来たのなら発掘だろうか?

 穴を掘ったり、何らかで上がったりしたものがたまたま工事現場から出て来たかもしれない。

 わかることは、発見した人たちが驚いたり、工事が遅れると不安に思ったという事だろう。


 これが引き金なったようで、ロンドン、ベルリン、パリ、カルフォルニアに巨大な都市があったという事が言われるようになった。さらに、横浜にもあったというのだ。

 フェイクニュースや陰謀論など情報が複雑怪奇な状況な時代であるから、誰もが慎重に調査をしているだろう。

 ただ、その情報をSNSに上げだした人たちは、もともとと持つ主義主張は千差万別。噂は好きでも政治的に偏っているということはないようだという。

 個人は特定できるし、言っていることが皆、どこか違うという。

 古い話であるため「近所のお年寄りから昔聞いた」や「父から、父親から聞いた話として聴いた」とか遠い話であるのは致し方がないとしても。


 日本にもし大きな都市があったとしたら、がれきが出てきている分信憑性は高い。

 ただ、そのころ、関東大震災が発生している。あれでも津波は発生している。

 それに、津波がなくても、海のそばの家が壊れ、物が流れる可能性だって否定できない。

 記録がない街が本当にあったか知る由はなかった。


●埋め立て地、発掘(神奈朝新聞、記事)

 パシフィコ横浜の拡張工事で遺跡が発見かという一報を受け、記者は驚いた。まず、そこは埋め立て地であるはずだから、遺跡と言われてピンとこないのもある。工事中で土を掻いたところに陶器や金属の道具などが出て来たという話だった。ただ、埋め立ての際に使った土に入っていたのかすらわからない。そうなるとその土をどこから運んだかという事になる。

 その土の中に入っていたとしても、ある種のゴミとなるようなものが入ったまま運搬するのだろうかという疑問も生じてくる。出土されたものが貴重なものであった場合、工事現場で発掘が行われるのだろうか。埋立地であっても? また、土を運び出したところでも、発掘調査はそちらでも行われることになるだろうか。

 発掘されたものの分析が待たれる。


 ※「埋め立て地、発掘」はこれ一本で終了し「大正浪漫」のタイトルに変更となった。


●大正浪漫(神奈朝新聞、連載不定期、記事)

 先日、パシフィコ横浜拡張現場で発掘された陶器や金属の道具は、明治から大正期に作られたものだと判明した。それと同時に、横浜に大きな都市があったという噂が飛び交いだしている。

 記者は横浜の海を見下ろすところにある大神宮に向かった。明治や大正期もそこにあったため、記録があるだろうと考えた。

 宮司(78)は「街があったという話は祖父から聞いている」という。その名前は「菱臣(ひしおみ)」と言ったらしい。

 名前もあるのに、これまで話題にならなかった理由を尋ねると「わかりません」という。実際、今回の陶器などが発見されたとき、そういう話があったなと思い出したという。

 本当に菱臣という名でいいのか、様々な情報を募ります。

 (以下にQRコード)

 (×月●日付)


 菱臣という謎の都市があったということは、日本だけでなく世界で話題になっているという事に記者は驚いている。どうやら、カナダやチリ、ハワイなど海で日本とつながっているところにがれきが流れ着いているという。11年の東日本大震災の津波によるがれきとこれまで考えられていた。しかし、陶器などの鑑定結果から、あちこちでがれきの年代測定をしてみたというのだ。

 その結果、明治から大正期の物だという。もちろん、東日本大震災のがれきであっても、明治や大正の物が流れ着いた可能性は否定できない。建物によっては江戸や昭和のものもあるはずだ。それでも調べたものは軒並み、明治や大正だという。

 その符号は何か不明だ。

 それと同時に、他にも大きな街があったという情報がある。

 イギリス・ロンドン、フランス・パリ、ドイツ・ベルリン、アメリカ・カルフォルニアに巨大な街があったという。それも、街であるが、多重構造であり、巨大なビルのようなものだったという。

 その中は科学技術も発展していたというのだが?

 情報が不足しており、これ以上進めると、SFやファンタジーのようなことになってしまうだろうか?

 続報が待たれる。

 なお、菱臣という名の街があったという情報をくださった方が多くありました。ここで御礼申し上げます。

 (×月△日付)


 世界各地にあった街について、どうやら、第一次世界大戦から大事に世界大戦の間に消えたという事が有力らしい。

 菱臣について情報を求めに大神宮の宮司(78)のもとを再び訪れたら「関東大震災で消えたらしいです」と情報を得た。世界各地で見つかったがれきは、この時に流出したものかもしれないという一つの推測ができる。

 疑問が生じるのは、これまでその情報がなかったという事だろう。それについては宮司も首をひねっていた。陶器などの出土だけでなく、世界各地での発見よりも、菱臣という名が出てからの方が近所の人から話を聞くようになったという。

「言霊でしょうか?」と宮司は言う。言葉には力があるというのは、日本だけでなく、ヨーロッパなどの文化でもあるのだ。

 どのような街があったのか調査が楽しみである。(△月●日付)

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