ウチの母がニートです
タヌキング
ニート母ここにあり
私の名前は一ノ瀬 菜々緒(いちのせ ななお)と申します。花の女子高生であります。
突然ですがウチの母はニートです。引きこもりです。
暗いバックボーンとかあるわけじゃなく、単純に社会では生きていけないと自分で判断し、引きこもる道を選んだ真正のニートなのです。
本来ならばそのままニートとしてひっそり終わる一生だった筈なのでしょうが、母さんにはしっかり者で世話好きな幼馴染の男の子がいまして……それが私のお父さんといえば、どういうことになったか、聡明な皆様には察しがつくと思います。
父さんと母さんが結婚して私が生まれ。母さんはニート生活でオロオロしながら私を育てたらしく、赤ちゃんの私は空気を読んで夜泣きを全くせず、生後五ヶ月で立って歩き始めたとか。覚えてませんが。
家事も全く出来ない母さん。父さんがとにかく万能なので仕事をしながら家事していましたが、私も物心ついた頃から掃除に洗濯、料理も出来るようになりました。師匠(お父さん)が良い師匠だったので上達も早く、今では何処に嫁に出しても良いレベルになったと自負しています。
「ナナちゃん、今日はカニクリームコロッケがママ食べたいなぁ♪」
家に帰ると微妙に面倒な夕飯を要求してくるお母さん。蟹買って来ないといけないじゃん。もう。
ちなみにお母さんは毎日上下グレーのスウェットを着ている37歳のアラフォー女子ですが、顔が幼く、二十代の女子に見えますね。長い髪を整えてちゃんとしたら美魔女特集とかに出れるんじゃ無いかな?
夕飯の支度の最中、お母さんはいつもの様にゲームしながら「うぎゃー」「ひぎゃー」とか悲鳴を上げています。ゲーム好きなくせに下手くそなのはご愛嬌。
さてと、我が母のご要望通りカニクリームコロッケが出来上がったので、晩御飯食べましょう。ちなみにお父さんは今日残業です。
「お母さん、ご飯できたよー。」
「びえーーーーん!!」
あれ?お母さんが泣いてる。別に珍しいことじゃないけど、このぐらいの号泣は久しぶりですね。
「どしたの?お母さん?鼻出てるよ。」
「だってぇ!!コイツが!!コイツがぁ!!」
私はお母さんの鼻水を拭いてあげながら、テレビのゲーム画面に目をやる。するとそこには、お母さんのキャラの敗北ポーズと共に、対戦した相手のコメントが表示されていた。
『弱っ、弱すぎて片手で相手してたわ。マジ雑魚だなお前。笑いが止まらんwwwもう一回やる?またボコボコにしてやるよwww』
ふぅ、テンプレートみたいな煽り文句。こんなのにお母さん泣かされたのか、全く子供なんだから。
「ひっく、ひっく、もうゲームやめて、ご飯食べる。」
ゲームの電源を切ろうとするお母さん。私はそのお母さんを制止して、コントローラーを奪い取りました。
そして再戦を選択。
「目にものを見せてやる。」
お母さんをバカにする輩は許さない。フルボッコにしてやります。
その後、ムカつく輩を相手に10タテで全勝しましたが、カニクリームコロッケはすっかり冷めてしまいましたし、ちょっとムキになり過ぎました。
「やったーーーー!!流石はナナちゃん!!私の自慢の娘ーーー!!」
ギュッと私を抱きしめるお母さん。
ちょっと恥ずかしいですが、お母さんの匂いは嫌いじゃありません。
こんな感じの日々を送っていますが、意外と毎日楽しいです。
ウチの母がニートです タヌキング @kibamusi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます