世界は色で満ちている。
上田のこ
世界は色で満ちている。
世界は色で満ちている。
そう感じたのはつい先日の事。
少し気が落ち込んでいた時、
街の賑やかな音に自分が切り離されていると感じて、
少し街から離れた脇道の公園のベンチで、一人考え事をしていた。
街の音がとても窮屈に感じてしまったのだ。
空を見上げると鳥が群れで飛び交い、目の前には子供たちが元気に遊んでいる。
世界は色で溢れている。
空は青く澄んでいるし、夕暮れには赤く染まり、夜には星が瞬いている。
そこは窮屈なんて程遠く、風の音さえ心地よく感じた。
世界は色で満ちている。
単に目に見えた色彩だけではなく、話し声や鳴き声や自然が放つ環境音。
それすべてに色を感じた。
同時に、自分自身に色が無いように感じてしまった。
自分が今どんな感情を抱いて、どんな事を思うのか。
年を重ねる事に何度も蓋を閉めていく度、段々と蓋が固くなっては
自分自身で開ける事が困難になる、けれども反対に開けたままでは
いつの日か押し寄せる荒波に、自分自身が傷つくことになる。
そうして蓋を何度も、何度も。
蓋を閉めていった結果が僕だ。
周りの声に身を任せては、荒波が立たない事に身を投じて。
傷つかないようにそっと蓋を何度も閉めた。
そんな生き方に僕は疲れてしまったのだろう。
色褪せた世界に映るのは、
怒りの色や悲しみの色ばかりで、
そんな荒廃した世界に嫌気がした。
こんな世界の住人になりたい訳ではなかったのにと。
僕は自分自身を嫌った。
世界は色で溢れている。
そう感じ取れたこの瞬間を僕は忘れないだろう。
一度閉じてしまった心の蓋を開けてくれた事を。
荒廃した世界に閉じこもる必要はないと感じ取れた事を。
世界は色で満ちている。
世界は色で満ちている。 上田のこ @nokopoki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます