1話 こんな時は
先生は凄い。
毎回、事件を依頼される度に駄々を捏ねるくせに現場が近づくにつれ、その事件の推理に没頭してしまう。実際、自分が運転している車の中でも渡した資料を珈琲を片手に延々と眺めている。
そんな事を思っていると事件現場に着いてしまった。
「先生、着きましたよ」
返事が無い。おそらく集中しているため、自分の声など耳に入ってないのだろう。
3回目の呼び掛けでやっと先生は車から降りた。
ビルの自動ドアの前には立ち入り禁止と書かれたバリケードテープが貼られており、その前には2人の警官がマスコミの対応をしている。
早速、ビルの中に入ろうとすると止められそう
になるが、手帳を見せたら何も言わずに入れてくれた。
「遅かったじゃないか、金森」
この憎ったらしい男は
「珈琲を買ってたら遅れた、遺体は」
平塚は私が言った事を聞いて苦虫を噛み潰した様な顔になっていたが、嫌味を言いながら遺体の前まで案内してくれた。
遺体を見た瞬間、口を開かなかった助手君が
死臭に耐えきれず吐きそうになり、手を押さえる。凄い可愛い。いや、そんな事は関係ないと
疑問に思った事を口にする。
「平塚、他の遺体はどこにある」
案内された部屋には1人の遺体しかなく、他2名の遺体が見えない。
「2階と3階だ全員殺された時間、場所全てが一致しないため我々は1人による犯行だと考えている」
聞いてもいない自論をエレベーター内で語られながら全ての遺体を見せてもらった。しかし、また不思議に思った事があった。
「おい、少し疑問に思ったんだがk
「首元の数字首元の数字か?」
義務教育でこいつは人の話を遮ってはいけないと習わなかったのだろうか。すると、来てから一度も口を開かなかった助手君が口を開いた。
「確かに自分も疑問に思いました。何故一階で
亡くなった田村さんの首元は3、二階で亡くなった細井さんは1、三階で亡くなった岸井さんは2なんだろうって.........殺害する順番ですかね」
「その通りだ。金森の助手、死亡推定時刻は数を重ねる事に時間が経過している。犯人が付けた目印だろう」
........果たして、本当にそうなのだろうか、何か分からないが自分の中で引っ掛かる物がある。確かに辻褄は合うが、都合が良すぎないか?
犯人が犯行に使った凶器をそのままにするだろうか?明らかなミスリードの様に思えるが、考える材料が少な過ぎる。こういう時は......
「平塚、容疑者はどこだ?」
「外の車内で待機させてる」
「今すぐ全員ロビーに集めろ」
事情聴取の時間だ。
真実は別腹です 夏目涼 @hosiwomiru
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