第35話 satellite

そのころ宇宙では、宇宙ゴミの一部が何者かによって漂う運動の方向性を変えられ、地球に向かって降り注ごうとしていた。


しかも、よりにもよって、その方向性というのは、茂木たちのいる付近であり、しかもそのサイズは、東京ドーム何個分とかいう膨大なサイズであった。


宇宙には、無数の宇宙ゴミを一つの塊にして落とす、迷惑なモンスターが存在するようである。その存在を、知る由もなく、彼らは、道を突き進んでいた。


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「なんか、空が雲一つねえのに暗くない?」と内線でつぶやいたのは、北村だった。


「おそらく、各地で大気の汚染が見られているのだろう。俺の第六感が正しければ、各地で無数の淫魔が生まれている。しかも、そいつらは倒すと妄りに猛烈な毒ガスを放出する。それらの影響で空が暗く見える。そういうことだ。」と黒服は言う。最近の黒服は、いい加減なことを言うので信用ならない。


「ほんとか?それ?」と茶化しながらも、空を見上げると、確かに不穏に空が暗い。そして、ややこしい言い方で言うと、雲そのものは一つないが、なぜか曇っている。


「ちょっとこれで見てみてくれないか。」と黒服は言って、油断したところに俺の延髄にさらなるワクチンを差し注いできた。


「痛(つう)!」と俺は言い、さらに「予告しろ予告!」と怒って吠えた。そして仕方なく、「あいよっと!」と言って、目の前で手を双眼鏡のようにしてのぞき込むような素振りをしたら、上空がまるで10000倍ズームしたように見えた。そして、その途端、思わず唾を飛ばしながら目に見えたままの状況を実況した。「うわあ!なんだあれ!なんか落ちてきてるぞ!やべええ!」と。


空から落ちてきているのは、熱圏を突き破り、成層圏で燃えて対流圏あたりで塵と化している巨大な物体をだった。


「あれ!やべえやべえ!地表までに燃え尽きねえぞ!」と俺は一人大盛り上がりしているが、他のメンツは至って落ち着いてる。なんせ、俺のようには、空がハッキリと見えていないからだ。


黒服だけは信じてくれていた。ただ、すごく投げやりな感じで指示を飛ばしてきたのは、遺憾だった。「うーん。仕方ない。吹き飛ばしてこい。誰かがお前を狙ってるんだ。ほれ、ソニックブームで済むだろ。行ってこい。」と言いやがる。


「仕っ方ねえな!もう!」と俺は叫んで、「あああ痛い!」と叫んでスピードとソニックブームを得て、「アイヨっと!」ともう一度言ってその落下地点に急行し照準を合わせて、落ちてくるであろう真下に位置した。


「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待てい!!!!!!!」と何度も俺は待てとほとんど叫んで言いまくり、喉を枯らした。


手からは無数のソニックブームが飛び出し、ドラゴンボールの気弾のように空を飛んで行った。「あいよっと!」とまた言って空を見上げると、それらの気弾がまっすぐに、落下してくる宇宙ゴミに向かって行くのがわかる。


遠い空で、「ボーン」「バーン」など無数の爆発音がなり、目に見えるよりも遅れて耳に届く。「誰だ宇宙ゴミ落としたの。許せん。」と言ったころには、空はさきほどより少し明るくなっていた。

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