終、希望の青

 空を覆い尽くす灰色の雲の隙間から太陽の光が差し込み始めた。雲は次第に掃けていき、青い空が見えてくる。


 俺は、彼女の姿を探す。



 俺は変わる、そう決めた。


 都合のいい奴にも、遊び道具にもなってやらない。


 自分の意思で、したいことをする。



 だから、今日こそは断る。


 瑠々子が背中を押してくれた。


 いっつも、助けられてばっかりだな、俺。



 最後の文化祭、俺だって自分の思うように楽しみたいんだ。


 誰とかって?そんなの決まってる。


 多分今頃、教室で独り本を読んでいるであろう、親友のアイツ。


 今年こそは、一緒がいい。


 待ってろよ、零ちゃん、すぐ行くから。



 中庭を走り抜けると、体育館の近くに彼女の姿が見えた。


 彼女の名前を呼ぶ。


 彼女がこちらを見た。


 手にはブルーハワイ味のかき氷。


 ふと見上げると、真っ青な空。


 どこもかしこも青ばかりの人の群れ。


 痛いほどの青。


 これがアオハルってやつか、と頬の筋肉が緩む。


 これが終わったら、俺も、アイツと――。



【了】





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墜死体とブルー 見咲影弥 @shadow128

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