第10話 揺れる心
Aの体がまともに動かないことも、Aが悲しみに暮れていることも、俺にはわかる。だからこそ俺はAの顔を見ることなく話し始めた。Aの言っていた、「他人に心配をかけたくない」
という言葉を巡らせて。
「時間が許す限り、話させてもらうよ。ただ聞いているだけでいい。」
Aの返事なんてなくていい。俺はただ、Aに伝えたかった。今まで教師として色々な生徒と接してきた中で一度も感じることのなかった事を…
「まず、何よりAが無事で良かった。そして何もできなかった俺に感謝してくれてありがとう。正直に言って、ずっと心配していたんだ。放送室でたまたま会ったときから…いや、アンケートのときからかな。なんか薄々気付いてはいたんだ。夏休み明けまで何一つ気にかけられなかったのは申し訳無い。でもさ…」
感有り余って、少し目が潤んできた。Aがどんなに辛い思いをしてここまで来たのか。そして、何もできなかった俺にAが放ったあの感謝の言葉。そのお返しをしてあげたい。俺だけでも味方になってあげたい…!だから…
「これからは違う。Aのことを全力で援護するから。もう君は一人じゃない。」
俺はそう言った。気づけば、涙が頬を伝うように感じた。まずい、こんなところで泣いてたら…。そう思って俺は言った。
「じゃあ、そろそろ俺帰るわ。また明日ね。おやすみ。」
俺は保健室を出た。扉を閉めたその時、俺は初めて心が揺れ動くような衝動に襲われた。結局、俺は保健室の前で溶けるように時間を使っていた。
悲しみの果てにあるもの あ(別名:カクヨムリターンの人) @OKNAYM
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