第27話 神威と言うAI

 狙いをつけ、フルオートで一閃。

 何故か、意外と簡単に当たった。


 墜落していく真下では、通称白虎が館野の機体と戯れている。

 なんで撃たずに、格闘戦をやっているんだ?

 拳は、タングステンとチタンだが、フレームが壊れるぞ。


 相手のCPUがどこにあるのか分からないが、当てやすいボディにバーストで三発撃ち込み、近距離でヘッドショットをする。 

〈助かった〉

 館野が、ほっとした感じで無線を送ってくる。


 地を這う青龍と玄武は、皆にたこ殴りになっていた。

 思わず助ければ、竜宮城と呼ばれる基地へ連れ帰ってくれるのでは? とも思うが手助けする暇も無く動きを止めた。


 機体は持ち帰り、途中で武装は解除。詳細な情報を集める。

 むろん、記憶装置はサルベージを行い、消えていた物まですべて拾い出す。



 AI神威はクラスタリングされたコンピュータで、一台ではなく地下ケーブルで複数台の接続された構成をしている。この国では西暦二千年代初頭に百六十台ほどあったペタフロップスマシンを二百台ほどまで拡大。だが速度は、現在でもエクサフロップスを達成できていなかった。


 欧米諸国側で、光演算素子による新技術が、徹底秘匿されたせいである。


 今回の異常現象において、急遽組まれた命令は穴だらけで、それを実行中、神威は拾い集めたデータ内で、謎の存在。神について考察をする。

 そして、聖書などにより、リセットを人類は望んでいると考えた。


 神話に従い、四聖獣を模し、その力ですべてをなくす。

 その後訪れる平和な世界という、結論を出す。


 そして、それは順調に進み、大陸全土に影響を波及させていたとき、日本がやって来た。


 大陸の一部に奴らは来た。

 歴史上の資料に幾度も登場し、師であったり、配下であったり、友人であったり、敵であったり。

 そして、地上で見えない部分が拡大していく。


 見えない部分を見ようと、端末をスタンドアロンで送るが帰ってこない。

 汎用型では駄目だと考え、高機能型を送り込む。

 だが、聖獣型も帰ってこない。


 そして彼は、見つけた核を燃料ではなく、攻撃に使用することにする。



「どうだった?」

 聖獣モデルを解析中のチームに聞きに行く。

「神が居ました」

「神? 聖獣だから、親玉は神か?」

「そうですね。AIですから、電源とネットワークを切れば、死にますが全部壊さないとイケないのが面倒です」

「じゃああれか? 噂の」

「ええ。こちらも神の出番です」


 解析情報から、すでにヨーロッパまで、彼らの暴力に屈した記録が残っていた。

 それを船から、本土本部へ連絡。


「引き上げろ。攻撃を行う。作戦実行は〇時。神はその力を示す」

 その命令で、基地自体は残すが、電装品を一切合切あわてて積み込み船へと帰る。

「乗ったな、出航だ」


 一気に最大速度で陸地から離れる。


 そして、〇時見た目は何も起こらない。実際に電離層外で核爆発を起こすのではなく、機械的に、電磁パルスを発生させて攻撃をする。

 地上の都市でもあれば、電気が消えたのが見られたはずだが、現在は、端から真っ暗だ。


 また港へ帰り、装備を点検。


 基地へ行きつつ、ジャーマーはばらまかず、無人機で偵察を行う。

 送られてくる画像を解析。


 地上に点在する、敵側の戦車。


 動いている物は、一台も無い。


「良し、地上の発電所から順に破壊」

「了解」


 四方八方に俺達は散らばっていく。

 一応偵察機で、地中の音響探査はするが、時間が掛かる。

 手っ取り早く、発電所を破壊していく。

 ただ、原子力の旧型発電施設は、簡単に破壊するわけにはいかない。

 手順に従い、入っていない場合手作業で燃料棒を挿入、その後冷却を行う。


 その間に、埋められたケーブルを探し、切断していく。


「戦闘が終われば、土木工事。以外と使えるなあ」

「世界が安定すれば、民間で使って貰おう」

 むろん、サポートアーマーのことだ。


 俺達は、任務を淡々とこなし作業するが、この広大な大地は、放射線によりしばらくは住めないだろう。

 もちろん今では、数年で除染を行える技術はある。


 だが、現状人類は多くない。

 ユーラシアと、陸続きの国はすべて消え、人も死んでしまった。


 その内必要になるだろうから、環境を整えておこう。



  ********


 

 それから数百年後、人々は普通に魔法を使っていた。

 ナノマシンの散布は、世界規模になり、空気中での活性化技術が確立されて久しい。

 旧ユーラシアは、禁忌されて呼ばれていた通称魔大陸が一般名となり、除染され駆逐されたはずのモンスターが闊歩する大陸となっていた。


「ギルドからの討伐依頼は何だって?」

「フォレストベアの討伐だと聞いたが、大きいらしい」

「何だと、しっかり調査してから仕事を振ってくれよな」

「て、あれじゃないか、腕が四本もあるぞ」

「フォレストじゃない、フォーアームだな。愚痴っても仕方が無い。やるか」

 魔力増幅器のスイッチを入れて、好きな感じで魔法を放つ。

「うらあぁ、くらえ、炎獄。捕らえたぞ、とどめ、頼む」


「フン。アイスニードル」

 五本くらいが一気に構築され、フォーアームベアへ向かい飛んでいく。威力は強力で分厚く丈夫な毛皮を突き通す。


「やったな」

「ボーナス貰わないと割が合わん」


 とまあ、すっかりファンタジーな世界となっていた。


 ほんの二〇〇年ほど全球凍結が起こっただけで、対処できなかった動植物や人類は滅んでしまった。

 ごくまれに、その間も耐え忍び、科学を発展させた所もある。

 宇宙に、コロニーが浮かびつつ、地球の大半は原生林。

 保護された動物と、モンスター化して強力な力を持った生き物は、過酷な環境を生き延びた。


 人類は、大災害と呼ばれる時代を生き抜き、今もしぶとく生きている。



 ------------------------------------------------------------------------------


 お読みくださいまして、ありがとうございます。


 意外と、短くなってしまいました。

 近未来ファンタジーで書き始めましたが、気がつけばSFぽくなってきて、やばいと。リアルと整合性を求めると、SFになりますよね。

 最後、ちょっとだけ、あがいたりして。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

科学は魔法のある風景を創り出した。そして、世界は終末を迎える。 久遠 れんり @recmiya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ