現代版日本昔話

第1話 リンゴ太郎

昔々ある山奥に、おじいさんとおばあさんが住んでおった。

ある日のこと、おじいさんはいつものように山にしば刈りに出かけたので、おばあさんもまたいつものように川に洗濯にでかけたそうな。

おばあさんはいつもの川辺に洗濯籠を置いて、ちょうどいい大きさの石の上で少しんの休息を取った。

「たかが洗濯仕事といえど、この歳になると堪えるのぉ。何かもっと便利な方法はないのかのう。」

おばあさんがため息混じりについた愚痴を聞いたかのように、川上からそれは大きな大きなリンゴが流れてきて、おばあさんがの洗濯籠の横に流れ着いた。

「これは食いでのあるリンゴじゃえ。」

おばあさんは大層喜んでリンゴを両手で抱えて持ち帰った。おばあさんが

持って帰ってきたリンゴを見ておじいさんも大層喜んだ。

「どれ早速切り分けて食べるで。しかしまぁ大きなリンゴじゃ。」

関心しながらおじいさんが包丁でその大きなリンゴを真っ二つに切り分けるとあら不思議、リンゴの中から背の高い大層顔色の悪い男が立っておった。

驚くおじいさんとおばあさんを前にその男はやけに落ち着き払った様子で、話し始めた。聞けばその男は未来から大切なことを伝えるためにリンゴに乗ってこの時代にたどり着いたそうな。

「私は人生の殆どの時間をアップルという会社のために費やしてきました。世間一般で言えば私は成功者です。しかし私はもっと家族や友人と一緒に時間をすべきだったと人生の晩期に後悔したのです。時価総額の高い会社もスマートフォンもあなたをきっと幸せにはしません。」

おじいさんとおばあさんは、この男の話の半分も理解はできんかったが、おじいさんもおばあさんも晩年を迎えていたので、その男の後悔の念だけは理解できた。

「わしらは苦労も多かったがこうしてずっと一生に過ごすことができた。わしらは、ほんに幸せな人生だったのかもしれんのぉ。なぁ、ばあさんよ。」

「死ぬ前の後悔なら星の数ほどあるかもしれませんが、この御仁の話を聞くとわしらの人生は幸せじゃったのかも知れませのう。じいさんや。」

スティーブジョブスはおじいさんとおばあさんの手を固く握って、

「リンゴは木になる実のみ。」と二人に囁き家を後にした。以降、おじいさんとおばあさんは男を見かけることはなかったが、孫たちにこの不思議な話とジョブスの「リンゴは木になる実のみ」という言葉を伝え、その不思議な伝説がその地に残った。

それから2000年経った今もその地は全く発展せず、いまだに男は山にしば刈りに女は川に洗濯にでかけるそうな。


めでたしめでたし。



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現代版日本昔話 @Yuyakt

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