手にしたチートで揺れる脂肪を武器に変え、全てをふわっとねじ伏せる!

 食べ物を喉につまらせ、死んでしまったぽっちゃり女子が主人公の物語。彼女はとある縁により、神様から特別な力と1体のスライムを貰うことになる。しかし、目覚めたその場所は死地への道中。しかも、ぽんと渡された力であるため、使い方もわからない。挙句の果てには自らの行ないでピンチを拡大することにもなって…。

 それでも試行錯誤しつつ、神様から貰った力の一端を使えるようになった時。ぽっちゃり少女の「食」と「波乱」とが待ち受ける異世界での生活が始まる──。



 窮地から始まり、最初からチート能力を持っているため、物語は序盤からハイテンポで進みます。一人称の読みやすい文章で、現れる障害を得意の魔法(カロリー)で次々に粉砕するさまは爽快感抜群!

 しかも、少しだけ…。そう、ほんの少しのだけ主人公が力こそパワーな考え方をしていることもあって、肉弾戦も苦手ではない様子。向かってくる敵──特に体系をバカにしたやつ──は、ちぎっては投げ、ちぎっては投げの状態。

 肉弾戦、魔法戦ともに目一杯、強さを楽しむことができます。

 次から次へとイベントが発生するため、全然飽きが来ず、先に挙げた読みやすさもあって、次から次へとページをめくってしまいました。

 本来は“重し”であるはずの脂肪も、主人公にかかれば、時に物理攻撃のいりょを上げる武器に。時に魔力として、圧倒的な威力を誇る魔法へと化けるんです。あれ、ぽっちゃりって最強なんじゃ? と勘違いしてしまいそうでした。

 そんな本作の魅力の1つを挙げるとすれば、ぽっちゃりらしい「食」に対するこだわりでしょうか。

 ぽっちゃりらしい死因。スキルもぽっちゃりを意識したもの。思考や判断も、全てぽっちゃり。ぽっちゃりという徹底された視点があるため、主人公の行動1つ1つに不思議な納得感があります。あらすじにもある『ゼロカロリー理論』には思わずクスッとしてしまいました。間違いなく、主人公の性格とスキルは相性抜群ですね。

 中でも食へのこだわりが見えるのは、主人公が持つ鑑定スキルが、食に特化していること。チート能力の定番でもある鑑定にも「食」が関係していて、この主人公、どれだけ食べることが好きなの!? となります。

 鑑定内容も相手の強さではなく、肉質や調理法といった、一風変わった情報を教えてくれるんです。微妙に役に立たないこのスキルですが、それでも、なんだか主人公らしいなと思えてしまいました。

 食と揺れる脂肪だけでは胸焼けしそうな本作。
ですが、ちゃんと癒しもあるんですよ。それこそ、主人公の相棒(?)であるスライムちゃん!

 ぷるぷる、ぴょんぴょん。合間に見せるこの子の存在が、圧倒的癒し! でも、このスライムちゃん。ただ可愛いだけじゃなくて、食べることが大好きな主人公にぴったりな相棒でもあるんですよね。その性能については…ここでは秘密にしておきましょう。可愛さと有能さについてはぜひ、本編で。



 食いしん坊ぽっちゃり女子が行く道は美味しそうな食べ物の匂いと、スパイス満点のトラブルの香りでいっぱい!

 それでも主人公は、持ち前の食い意地と手にしたチート能力で全てを美味しく食い尽くす。

 ゆるふわっとした世界観。また、チート能力を持った主人公の作品でも、オリジナリティのある異世界ファンタジーを求める方には、ぜひ一度、ご覧になってみてほしい作品。面白かったです!

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