マッチングアプリで知り合った男 3

目の前に座る、金髪にパーマをかけて指先で毛先を巻いている女性は、どう見ても少女にしか見えなかった。


運ばれてきてから数分が経った飲み物のコップは、カランと音を立てて水面を揺らした。


馴染みの喫茶店とは言えど、ここまであからさまに遊んでいるタイプの女子が来ると場は凍るものだとはじめて知った。


ドレスのような薄いワンピースを着込んでいる少女は、マッチングアプリを遊び目的でやっていると言われても疑うことはないだろう。


「えーと、それで出会いからいいですか?」


「だからあ、マッチングアプリでえ〜」


「じゃなくて、どういう会話をしたんですか?」


依頼を送ってきた時の文面と実物の違いに頭が追いつかないが、とりあえず話してもらわなければ進まない。


「向こうからあ、ちょっと会わないって言われたから初日に会ったの」


「しょ、初日?」


「そう、初日。だって気になったらいつでも会いたいものじゃなあい?」


初日で会った男がまともか知りたいとか、絶対遊ばれているだけだと確信しながらも少女の話を聞く。


「あたしもお、ちょっと怪しいと思ったんだけどお……」


「はい、思ったんですね」


「でも、彼、好きって言ってくれてえ。それで結婚したいなあって」


「え、それだけ?」


好きなんてリップサービスだろと心の中で思いながら、少女からその人物の容姿や名前を聞いてメモを取る。


少女が用事があると立ち去ったのを見届けてからため息をつく。


「こんなのあからさまにヤバいやつじゃん……」


ぽつりと呟いてから残っていたジュースを喉に流し込んだ。


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恋愛業界、退職します! 澤崎海花(さわざきうみか) @umika

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