第8話 無双

「麗華、お前はボスを叩け。今回はお前の依頼だからな」

「分かってるわ。その代わり……周りの有象無象の雑魚共は任せたわよ」

「無論だ。この程度———」


 俺は手を前に翳し、うじゃうじゃ居るモンスターの2割程に狙いを定めて握り込む。

 途端にモンスターは引き寄せられるように1箇所に集まると、空間が歪んで一気に圧縮された。


「———片手間でも余裕だ」


 その瞬間———後方のハンター達からの歓声が上がり出した。


「す、すげぇ……!! あれが世界最強の1角か……!」

「幾ら何でも強すぎだろ……!? 同じハンターか!?」

「俺には『剣聖』も『陰の王』も強すぎてどっちが強いかなんて分かんねぇよ……」


 そんな声が耳に入ってくると同時に、麗華が小さくため息を吐いた。


「……相変わらず規格外の能力よね、それ」

「1番使い勝手のいいスキルだからな」

「私にもそんなスキル欲しかったわ」

「麗華も十分強いだろう?」


 俺と麗華はそんな軽口を叩き合いながらも、俺は麗華を護衛するように、麗華は自らの道を切り開くかの如く、次々とモンスターを駆逐していく。

 麗華が『魔剣断空』を一振りすれば、面白いくらいにモンスターが真っ二つ———又はその身すらも消滅させる。

 俺が外套をはためかせて拳を振えば、モンスター達の身体が砕け散り、吹き飛ばされて行く。


「麗華、標的は?」

「間違いなくでしょうね。見た感じB……いってA級ね」


 そう言って麗華が睨む前方には、2頭の体長100メートルはありそうな巨大な龍の様な蛇が苛烈な戦いを繰り広げている。

 2頭がぶつかれば海が轟き、巨大な津波が海岸へと押し寄せた。


「……早く倒した方が良さそうね。周りのモンスターも彼らの戦闘から逃げて来たみたいだし」

「なら周りへの被害は気にするな。俺がお前と2頭を隔離する」

「アンタが倒せば1番早いと思うのだけど……」

「俺は自分の意思でしか動かない。それに、今回は麗華でも余裕で倒せるだろう?」


 俺がそう言うと、麗華は肩をすくめた。


「まぁアンタは協会に縛られないSSS級ハンターだものね。……何故か協会長には逆らえないようだけど……」

「それは言うな。やむを得ない事情があるのだ」

「……訊かないでおいてあげるわ。とりあえずアイツらを倒すわ」


 そう言って麗華が瞳に殺気を宿すと、2頭のシーサーペントが争いを止めて、絶対的な強者を前に警戒心を露わにする。

 しかし———対する麗華は何の緊張感も危機感もなくただその場に留まって2頭を見下ろしていた。


 ほんと……モンスターと聞いて震えていた麗華が懐かしい。


「《空間断絶》」


 俺は麗華の攻撃で海の環境が変化するのを防ぐために先程よりも強力に空間を隔離する。

 突如空気が変わったことに気付いたのか、2頭のシーサーペントは低い唸り声を上げた。


「「グルルルルルル……」」

「ふんっ……私の大事な時間を邪魔した罪を償って貰うわよ」


 麗華は『魔剣断空』を構え———瞬時に2頭に突っ込む。

 2頭が感知するよりも速く移動した麗華は、1頭に狙いを定めて断空を振り上げると、1回転する様に剣を振り下ろした。

 

「グルァアアアアア!?」


 自慢の鱗の装甲をあっさりと斬り刻まれ、至る所から血を噴き出したシーサーペントが悲痛の叫びを上げ、怒りに身を焦がすが———その前に既に麗華は背後に移動していた。


「《空一閃》」


 恐ろしい速度で振り抜かれた『魔剣断空』は、シーサーペントの頭をまるで豆腐の様に綺麗に斬り落とした。

 頭を失ったことにより力を失ったシーサーペントは海に崩れる様に落ちる。


 しかし———麗華は未だ止まっていなかった。


「アンタが最後ね」


 麗華がそう言うと同時に、もう1頭のシーサーペントに攻撃する隙すら与えず頭を粉々に斬り刻む。

 その剣捌きは、さながら舞踏館で優雅に舞っているかの様に、見ている者達を錯覚させる。


「ふぅ……これで依頼は完了ね。どうよレイド。私も強くなったでしょ?」

「……そうだな。もう俺が文句や口出しなど出来る領域ではないな」

「……っ、も、勿論よ。いつか必ずアンタと同じSSS級になるんだから」

「そうか。頑張れ」

「言われなくても」


 俺達はそんなことを話しながら、討伐証明をしに岸へと戻った。

 

 

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チャラ男が実は世界最強のSSS級ハンター〜ハンターで居るために、制約付きの最強スキルを携えて学園に通う〜 あおぞら @Aozora-31

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