第12話 人気者とのコラボ、開幕

 俺の同期にして、四期生の中で一番の人気を得ているVTuberがいる。

 名前は〈白犬 琥珀〉。頭に犬耳をつけ、おっとりとした話し方。白いスーツに紫根の瞳で超イケメンのモデル。身長も180cmなんて、女性向けの設定がてんこ盛りある。



 その設定のおかげか、視聴者はほとんどが女性。スターフラワーのVTuberのほとんどが男性視聴者向けで作られているというのに、白犬だけは突出していた。


 デビューから一週間で爆発的にチャンネルの登録者は増え、今じゃ俺の三倍近い数字の差がある。事務所の力や、SNSなどで人気を得た俺との圧倒的実力差…


 こちとらショタ悪魔で視聴者の2割女性だが、8割の野郎共からのツッコミで溢れ返ったカオスな配信を毎回してるんだぞ。



 何度か配信を覗いて勉強を試みたが、コミュ力のレベルがそもそも違う。

 初速だけ良かった俺と根本的に違うのだ。


 もう一人の同期で、男性VTuber〈リエール・ジュライ〉と何度かコラボをしており、今じゃその二人で【リエ犬】なんて呼ばれ方でさらに人気を伸ばしている。


 そんな人気者からのコラボ招待は唐突に届いた。


『唐突なメッセージをお許しください。

 嵐山マネージャーさんに連絡したところ、ご自由にメッセージを送って下さいとの事で、事務所を通さず、個人的にこうしてメッセージを送らさせて頂きました。


 本題なのですが、ここ最近天魔さんの配信でよく笑わせてもらっているのですが、よければこんな僕でよければコラボなど如何でしょうか? お返事は急ぎませんので、よいお返事をお待ちしております』



 と、ご丁寧なお誘いメッセージだった。

 こいつは裏でも配信の時のキャラなのか? 配信でももうキャラ崩壊して、デビューの時のコンセプトを一割程度しか守ってない俺とは大違い過ぎないか?


 もしかしたら同期潰しの罠かもしれない。

 男女比がほとんど逆の俺らがコラボしたら、俺は女子高生からツッコミではなく炎上を食らうかもしれない。


 とはいえ、白犬が配信で俺とのコラボをしたいなんて言ったらしく、近々コラボ!?みたいなノリはもうできていた。


『やりましょう』


 まぁデビューした時からなるようになれ、って感じだったし、炎上なんて今更だろう。



 一週間後、俺は超人気者とコラボをすることになった。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


『はい、おはワン。今日は前々から僕がみんなにコラボしたいと言ってた人に来てもらうことになったんだ――そう、天魔くんです!』


『あー、ども。天魔るいです』



 :おはワン! 天魔くんの声、初めて聞いた

 :思ってた声と違うのわかる

 :てかこいつやる気どこ?

 :あー、俺こいつの視聴者だけど、やる気どころかキャラすらとっくの昔にどっかに置いてきたぞ

 :いや、捨てたんだぞww


『あはは、挨拶しただけで超大盛り上がりだね、天魔くん』

『視聴者にこいつ呼ばわりされたことあります? 白犬さん』

『僕はないかな? 名前以外の呼ばれ方なら、王子様とかワン様とか?』

『くっ…もういっそのこと殺してくれ…』


 :こいつのキャラどうなってんだ

 :天魔くん思ってたよりギャップ萌え笑

 :おい、天魔! お前女子高生に人気みたいだぞ!

 :コラボ相手に挨拶の次に殺しを懇願してるやつのどこがいいんだw

 :俺らは好きだぞ、天魔


『僕の配信にはいない面白い視聴者さんたちを連れてきたね、ありがとう天魔くん』


 :なんか感謝されてて草

 :どういう感謝?

 :女子高生とカオス配信者の化学反応

 :混ぜるな危険だぞ、やめとけ


『今から俺は白犬さんとゲームするけど、お前ら白犬さんに迷惑かけんなよ!』

『そうそう、今日はゆったりできるゲーム探してきたからね』


 :挨拶から王子様に困惑させて迷惑かけてたやつがなんか言ってて草

 :今日は天使モードでやってけ〜、俺らも見たことないけど

 :こいつ一生悪魔だけど大丈夫か?



 いつもカオスなコメント欄だが、今日はそこに女性視聴者も多くいるせいで、さらにカオスになっている。


 とはいえ、白犬もそれに対しては悪い気をしていないらしく、逆にそこがコラボの醍醐味と言わんばかりだった。


『今日するのはアソブ大全ってゲームをしてくよ』

『わーい、ほら拍手しろお前ら』


 :SPEXじゃないのか

 :お前が王子に勝てるのはSPEXくらいだというのに…

 :やめろ!天魔のライフはもうゼロよ!


 アソブ大全とは、ここ最近若者などに大きな人気を博しており、リバーシやダーツ、ボーリングなど。基本的なものはもちろん、日本のみならず、海外のマイナーなゲームなども多種多様に収録されている。


 白犬がSPEXをやったことないというので、SPEXしかやったことない俺が遊べるギリギリを選んだというわけだ。


『白犬さん、やるからには負けませんよ。俺こう見えて負けず嫌いなんで』

『僕も結構な負けず嫌いだよ』


 そして始まったアソブ大全の三番勝負。

 コメント欄はゲーム開始と同時にさらに活気付いた。

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死体撃ちしたら、めっちゃバズった件。~相手はクラスメイトの人気ゲーム配信者なんだが、何故か俺がVTuberになってコラボすることになった。ほかの配信者とコラボ?彼女が多分許さない~ 月並瑠花 @arukaruka

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