ブルーズという名の革命者たち
れん
第1話 選ばれるとは
「選ばれる」とは一体なんだろうか。
特にスポーツにおいてはよく使われる言葉だろうか。
スターティングメンバーに選ばれる、強豪校に行けるほどの実力を持つ、強豪校で活躍する、全国大会に出場する、優勝する、代表やプロになる……。
このような「選ばれる者」はまさしく素晴らしいものだが「本当の一握り」でしかない。
分母が圧倒的なのに対し一は当たり前、十もあればかなり多い方である。
では「選ばれない者」とは何か。
それは屍たちである。
選ばれた者たちが上に立つための踏み台。
まさしく「悲劇的な存在」であろう。
……ではそのような者たちが革命を起こしたら?
周りの疑念を晴らし躍進をしたら?
「選ばれなかった者」たちが「選ばれた者」になろうとしたら?
それはとても面白く、奇跡的かつ必然かもしれない。
革命という名の「成り上がり」なのなもしれない。
「っふー……。」
センターラインの先に相手チームの選手たちがハイタッチや肩を組んで喜んでいる。
彼の耳にはその喜ぶ声ではなく走った後に乱れる息の音が耳に強く残る。
気持ちの落ち込みが身体に重く現れ、膝に手をつく。
それまで感じられなかった疲労が身体に重くのしかかる。
まるで拷問に使うような重石のように。
「
大量の汗が地面に落ち、ゆっくりと土に滲んでいく。
その様子をぼーっと見つめているうちにチームメイトから声をかけられる。
「……うん。」
重い背中を起こし、重い足取りで整列すれば審判がホイッスルを鳴らしたのに合わせて礼をする。
〇対四。
なすすべなく敗北した。
相手は県で一番と言ってもいい強豪クラブチーム。
自分たちのようなぽっとでのクラブチームが勝てるような相手ではない。
ベンチに戻ればすぐに荷物を引き上げ、ブルーシートが引かれてある本拠地に戻る。
二回戦敗退という、なんとも言えない結果で中学サッカーを終えた。
「……高校はサッカーする?」
周りの雰囲気は引退が決定したのにも関わらず、重い雰囲気はない。
遥弥のチームメイトはユニフォームから移動着へ着替えながら尋ねる。
「もちろん。高校で引退するって決めてるから、やるに決まってる。」
遥弥の強い意見にチームメイトは共感する。
「そうだよね。でも高校どうしようかな……。遥弥はどこ行くの?」
「俺は……
彼も着替えながら質問に答えていく。汗ばんだ自分のユニフォームの匂いが鼻に入り眉を顰める。
「『しほく』か。いいんじゃない?いい感じのレベルでサッカーできそうだし。」
「そう、低すぎないしね。」
そして着替え終えれば監督の最後の言葉で締め、遥弥たちの中学サッカーは終わった。
自宅へ戻るための電車に乗れば遥弥は椅子に座る。
チームメイトは他の路線のため一緒になることはなかった。
一人だけの帰り道である。
「強かったなあ……。ああ言う奴らが全国とかプロになるんだろうな。」
ガタンゴトンと音を鳴らしながら走り揺れる電車の車内に合わさり、自分の身体も揺れる。
隣に人は座っておらず、車両には二人程度しかいない。
「ウイングで使ってもらえたけど、中々活躍できなかったなあ…….。トレセンも選ばれなかったし、そもそもスタメンとベンチの交互みたいなとこあったしな。」
自虐的な笑いを浮かべる。彼が意識せずとも脳内はどんどん中学時代のサッカーを思い出させる。
楽しかった思い出から苦い記憶まで、全てだ。
そうすれば次第に彼は膝に置いてあった黒色のチーム名が入ったリュックに顔を埋める。
「くそうっ……!!」
決して努力していなかったわけではない。
だけども結果を残せなかった。満足いくようなサッカーを送れなかった。
そして中学最後の試合も不甲斐なく終わった。
その悔しさが胸に込み上げ、込み上げたものが流れ出る。
「絶対北斐で活躍してやる。まずは受からないと……!!」
彼だけではない。
全国の多くの者たちがこのような悔しい想いをして引退していく。
それらは全国……いや、県の有名プレイヤーにすらなれないような「選ばれなかった者」である。
そして彼らは「選ばれた者」となるよう努力し、「選ばせる」ために奮起する。
それは彼が進学しようとしている高校、市立北斐高校も同じである。
春、選ばれた者たちの新たな運命が始まる。
青いユニフォームに通る白色の中央線、白色のパンツに青色のソックス。
伝統的な「ブルーズのユニフォーム」を袖に通し、「選ばれないようになった高校」で躍進を想像し邁進する。
これは「選ばれなかった者たちの革命」の物語である。
ブルーズという名の革命者たち れん @ren0950
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