凍え死ぬまで

@kitaku_masann

第1話




『…ここ…見たことない景色だなぁ…』




青白い世界に独りぼっち


この世界が平和だったら隣にいたはずの家族の顔も、もう思い出せやしない




最近は寂しいという感情すら薄れてきた


どうしてこんなことになってしまったのだろう




第5次世界対戦が原因だったのか、


はたまた地球温暖化によって溶けた氷から現れたウイルスが原因だったのか、


高校入学直後に学校生活の終了を余儀なくされた私には分からない




答えの出ない問題に歩みを進めながら思考を巡らせたが、憎き致死性ウイルスに侵された友人の顔が浮かんだところでやめた



…死にたくはない

少なくとも、ああはなりたくない


その思いが歩みを早めさせる



バサッ



翼がはばたく音につられ顔を少し上げる


無数に広がる白銀の世界に少し気が失せてしまったが、影を見るにあれはカラスの奇形かなにかだろう



『あっ』

案の定墜落したので落下地点に向かってみた


右翼は異常に肥大化しているが、それと逆に下半身はまるで右翼に養分を吸い取られたかのようにヨボヨボしている



この世界で目覚めたときに私の肌がいつの間にか薄黒く、水を弾くようになっていた以上このカラスがなぜこうなっているのかなんて考えるのも野暮だろう



食料の確保という本来の目的を果たすため、振り返って歩みを進める


カラスが居たということは他にも生き物がいるかもしれない



腹部に口がある魚や5つの頭を持つ柴犬らしき生き物が居るこの世界でもまず優先すべきは食料だ







他の人間なんて探すだけ無駄



『歩みを止めたら待つのは死のみ…』

そう言い聞かせなければ明日目覚めることができる保証がなくなってしまう、確実に





ふと足に何かがあたる感覚がする



魚や鳥の死体とは感触も音も違う

眉間にシワを寄せながらも、恐る恐る足元を確認する


猫の奇形の死体はもうこれ以上見たくない














『…人だ』

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