動く骸骨は不敵に笑ってみせる
藤泉都理
動く骸骨は不敵に笑ってみせる
大きな大きな真っ赤な満月を背に、動く骸骨は赤子を見下ろした。
赤子の下に敷き詰められるは、榊の枝葉。
赤子の四方を囲むのも、榊の枝葉。
仕上げにと、動く骸骨は口笛を奏でる。
すれば、結界の完成である。
「来い、大悪魔め。今度こそ」
目覚めた赤子の鳴き声に、動く骸骨の声は掻き消された。
予言者は告げた。
一が二つ、ないし三つ、あるいは四つ、もしくはそれ以上続く年、一の月、一の日、一の時、一の分、一の秒に生まれた赤子が、その時間から一時間が過ぎた頃に大悪魔が乗り移り、世界を破滅へ導くだろう。
予言通り、大悪魔は現世に出現し赤子に乗り移ろうとしたが、悪魔祓いが命を賭して大悪魔を追い返したおかげで、この世は平和が保たれていた。
そして、今回もまた。
「ヒェエエエエエアあのーですね。大悪魔からあなた様にぃぃぃお手紙をお預かりして致しましたですはい!」
緊張に満ち満ちた空気の中、出現したのは、大悪魔、ではなく、大悪魔の使いであった。
動く骸骨は警戒を解かないまま、低頭姿勢の大悪魔の使いから書簡を受け取って、何の力も込められていないのを確認してのち、紐をほどき、中を開いた。
【あー。動く骸骨ちゃん。おひさー。あのさー。今回、こっちでちょっと問題が起きちゃってー、そっちに行けなくなったんだわー。なんてーうそうそ。本当はあんたと戦うのが面倒になってー。ごめんねー。あんたはおれと戦って、おれを倒して、早く呪いを解いて骸骨の姿からオサラバしたいんだろうけどさー。こっちにもこっちの都合があってさー。だから、今回は骨休みだと思ってゆっくり休んでくださいって思いました(あれこれ作文?)】
「とどどどど、ゆーことで。今回は大悪魔様は来られないのですので、戦いはナシという事で平和は保たれたままとゆーことで。私はこれを届けるだけですのでさようなら!」
ぽふん。
紫色の煙が発生したかと思えば、大悪魔の使いは消えていた。
「………流石は大悪魔だな」
不敵に笑って見せたのち、動く骸骨は結界を解いて赤子を抱き上げ、早く両親の元へ帰ろうと言ったのであった。
「いつか必ず、おまえの根城に「ぎゃーあああああおんぎゃああああああいいいいいい!」
「あ~よちよち。もうすぐにパパとママに会えるからね~」
(2023.8.24)
動く骸骨は不敵に笑ってみせる 藤泉都理 @fujitori
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