つぼみ

 携帯の通知はあの日からつかない。

 がんばってねの言葉は一方通行に向かっていって、彼の返事はない。


 あたたかい部屋と、並んだベッドと。

 一緒に住んでいるのになぁなんて思うけど、きっと一緒に住んでいるだけ。

 からからになった心はきっとずっとそのままだろうし、ただぼんやりと、秒針がまわっていく。


 わたしって、なんなんだろうね。


 あたたかい部屋を守って、彼がおいていった服を一人で洗って。

 彼が食べるかもってつくった食事は、冷蔵庫に入ったままで。

 ただ、一緒に住んでるだけ。


 身体は彼を忘れてしまったし、心も、きっともう、ずっと前から彼を忘れているんだろう。

 わたしって、あなたにとって、なんなんだろうね。

 とっくのとうに宙ぶらりんで、嘘でも愛を囁けないし、触れてほしくないだなんて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜夜中、帳はそこに 浅葱 游 @asagiyuuuuuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ