怪異的————懐疑的。
青ニシン
まきこま世界
満点の満月、その明りに照らされて僕はそこにいた。
辺りは木が生い茂る森。風が吹くたびに
ここは峠。別にどこというわけでもないが、どこかの峠の高速道路だ。
ただ単に、何かをするわけでもなく、意味もなく、理由もなく、そこにいた。
遠くから、はたまた近くから、虫の鳴き声が聞こえてくる。存外、月明かりが強い。
風は吹かず、僕の邪魔をしない。
――――それにしても、普通の人間なら、こんな不気味で
お化け。妖怪。怪異。
存在してそうで存在せず、生きてるようで生きていない。生きていないので死ぬことはなく、消えるか残るかの二者択一。
存在することにはするのだが、存在しないといえば確かに存在しない。
そもそもとして、知らなければ出会うことも見ることも干渉することもできない。
そんな恐ろしくも儚げな怪異、通称、〈
それは見た目はただの回っている
ただ、それだけならただの
恐怖がある。
――――
しかし、そんな膨大な意味や理由や象徴を持つ〈
ならばなぜ、〈
〈
しかしそんな〈
————だが絶対に、絶対に絶対に絶対に、廻転を周回を不変を、揺るがしてはならない。何故なら————
「……ん……ここ、どこだ……?」
目の前に横たわる、青年がそう言った。どうやら、目が覚めたらしい。
そして、僕を見て、言う————
「……なんだ……?このコマ……」
コマ。
巻き、込まれる。
そしてその責任は、この青年に課せられた。
以前の僕同様に。
巻き込まれ、引き込まれ、引きずり込まれる。
もう一つの、誰もいない、停滞しきった、この世界に。
回転をやめた、この世界に。
そしていずれ、彼も僕と同じになるだろう。
月は、相変わらず、動かない。
怪異的————懐疑的。 青ニシン @Nisin_very
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