著者 後書き

 小学校教員三年目の二十五歳、佐渡字 美雨(さどあざ みう)です。本著は、ミステリ作品となっておりますが、自分のこれまでの人生(特に大学で哲学を専攻した二十歳〜教員三年目の二十五歳)に基づく、私小説の思いで書きました。

 教員生活に悩み苦しんでいた時に、エーリッヒ•フロムの「愛するということ」と、太宰治の文学作品群を手に取りました。これらの本は、本著でも主人公である辻塚留佳という人物を通して度々取り上げましたが、私自身に大きな影響を与えました。

 私自身は、実に愛されて育った身であるため、恥ずかしながら教員になってはじめて、それぞれの家庭が、複雑な悩みや問題を抱えていることを知りました。

 それと同時に、上記の本との出会いを通して、各家庭が抱える問題の大部分は、「本当に子どもを愛せているのか?」という問題に帰結するのではないか?と思うようになりました。

「人の愛し方」というものを、我々が学んだことがありません。原因は、方法論が存在していないからかと思います。どのようにすれば、相手に「愛している」と伝えることができるのか。坂口安吾の指摘に沿う言い方でいえば、「大切に思っていること」を、どのようにすれば、相手に伝えることができるのか。

 これが、三年間子どもと、家庭と関わってきた現段階での私の哲学の命題です。

 

「愛の搾取」を通して、一つに、社会側の搾取的要望における教員の働き方改革の問題、また一つに、親が子を愛することは技能的であり、親の努力義務であるという意見、この二つを、物語を通して感じ、考えていただけたらと願っております。

 尚、私自身、齢若く、まだ自分の子どももいないため、「愛する」ということが何なのか、実感を伴って理解していない可能性も十分にあり得ます。

 読んで頂いた方の中に、納得のいかない言葉や、物語設定があれば、それは教員三年目の若気の至りと、微笑ましく静観していただければ幸いです。

                              佐渡字美雨

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愛の搾取 佐渡字美雨 @sadoazamiu

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