第7話 ティム
♦︎♦︎♦︎
アリスとメリーアンが落ち着き、目を赤く腫らしながらも笑顔になってきた頃。
「アリスお嬢、俺をティム(使役)してみないか?」
「?何それ?」
「アリスお嬢はティムって知ってるかい?だいたいの場合は猛獣を手懐ける為に行うんだ。仔猫の俺も喋る猫が普通とは思えないし、その内に誰かに見つかる、その時に使役されていれば離れる事はないだろう。俺はお嬢になら使役されてもかまわない。」
「うーん、契約書を交わすのかしら?メリー?」
「アリスお嬢様、契約書など難しい言葉をいつ覚えたのでしょう?書類ではなく魔術契約では?」
「そうだね、ティムの魔術契約として契約者とその下僕かな?俺も詳しくは知らないけど使役すると契約者には危害を加えられないとか細かく契約できるらしいからご両親も安心すると思うんだよね。アリスお嬢は魔術は使えるの?」
「分からないわ、マイケル…。
メリー!どうしたら魔術が使えるのかしら?」
「アリスお嬢様…、子供は5歳を迎えると教会で御祈りをし稀に天授として神様より才能を授かる事があります。その際に魔術が使えるだけの魔力の有無も測定されるのです。」
「そう……、じゃあ私には無理ね。メリー、少し手間をかけるけどティム魔術?の本を読んでくれないかしら?どうしてもティムの魔術を使いたいの!」
「お嬢、教会で御祈りすれば良いじゃないの?」
「あぁ、マイケルは知らないよね、私はお祖父様から一族として認められていないから表立って教会に行けないし、ましてや教会の履歴跡が残る事はさしてもらえないわ。
だから、メリーお願い!読んで教えて欲しいの!」
「アリスお嬢様…、そんな顔をされなくてもメリーはお嬢様が覚えるまで付き合いますとも!」
メリーアンは今までもアリスに色々な書物を読み聞かしてきた、主に国の歴史や勉強の足しになる書物だ、またには英雄譚や演劇、歌劇、喜劇などもあったが、しかし、これほど前向きで情熱的なアリスは見た事がなかった。そして、嬉しかったのだ。これほどやる気になっているアリスに。
♦︎♦︎♦︎1週間後
「おぉ、ブリストルか、もう1週間経ったのだな。早いもんだな。」
「はい領主様。何か問題でもありましたでしょうか?」
「あれから、アリスも明るくなってくれて、感謝しているんだ。良い仔猫を持ってきてくれたよ。」
「ありがとうございます。仔猫も喜んでいると思います。」
「それと、消耗品があるらしいな、メリーアンに聞いて切らさない様に持って来てくれ。代金は執事のセバスに言付けてあるのと、邸への出入りの札も渡しておくから登録をしておいてくれ。」
「ありがとうございます、領主様。帰る前に仔猫の様子を見させてもらえますか?」
「そうだな、アリスは気に入っているから、病気を罹って早々に死んでもかなわんから、良く見ておいてくれよ。それでは、これからも宜しく頼むよ。ハッハッハッ…」
アレックスは上機嫌で部屋を出ていき、執事から代金を頂戴しアリスの部屋に向かうブリストル。
(あの仔猫は上手く 猫をかぶっていた……いや、猫そのものだな)などと詮無い事をブリストルは考えて1人ニヤけて、案内の使用人について行った。
♦︎♦︎♦︎アリスの部屋 再び
「アリスお嬢様。ブリストル様がお見えです。」と、案内の使用人が問いかけると中から入ってもらってと声がかかる。
「失礼致します、ブリストルです。アリス様その後いかがでしょうか?」
「こんにちは!ブリストルさん。もう一週間経ったのね…」
アリスはこの一週間の出来事をブリストルに話して聞かせていた。
兄弟達から羨ましがられた事や両親から今は使われていない離れにマイケルと暮らす許可を得た事など嬉しそうに話していた。
メリーアンは微笑ましくアリスを眺めている、アリスが家族以外で楽しく話しているのは初めてではなかろうか?使用人達にも気を使うくらいで、ましてや微笑みながら楽しそうに…やはりアリスも普通の女の子でお話好きなのだと。
改めてアリスに外の世界を見せてあげたい、友達を作ってあげたいと思うメリーアンだった。
話しが落ち着いたところで、アリスがブリストルに、聞きたい事があると言ってきた。
「ティム(使役)ですか?…
うーん私も冒険者として活動していた時には何度か見かけましたが、少し特殊な魔術ですからね、私は使えませんが資料があるか調べてみましょう。
ところで、ティム魔術はどこからお聞きに?」
「お願いします、メリーにもティム魔術の本を探してもらったのですが見当たらなかったのです。
ティム魔術はマイケルからです。」
「……、マ・イ・ケ・ル君!
アリス様、少しマイケルとお話しを」
ブリストルはマイケルと部屋の隅で話し合いをする事に、
(マイケル、テイム魔術って知ってるの?)
(オーナー、魔獣のテイムって異世界物の物語やゲームでよくあるやん?えっ無いん?)
(いや、あるよ!魔獣を手懐ける手段だよ魔獣を!マイケルは普通の喋る猫だよな!)
(普通の喋る猫って…普通じゃなく無い?!)
(魔獣では無い獣にティムがかけられるかどうか?どう言う訳か普通の家畜にはかからないから、)
(えっそうなんだー)
(はぁー、昔の仲間にあたってみるわ)
ブリストルはアリスから宿題をもらい領主邸をあとにする。
「お嬢、ごめんな。なんか大事になりそうで…
もっと簡単に出来るものだと思ってさ。」
「ううん、たぶんマイケルは私の事を思っての事なんだよね?」
マイケルはティム契約で契約主に危害を加えない事を契約内容に盛り込めば良いと考えて、あわよくば他のスキルも顕現するかもと。企むマイケルであった。
アリス・メイの非日常(仔猫はアリスの安寧を願う) 優良脂肪 @taco-yaki
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