血塗れの花嫁【I WRITE MY OWN STORY , NOT YOU.】

『I WRITE MY OWN STORY , NOT YOU.』Prologue

 あんた、人間は人を殺すってのに、慣れることはあると思うか?

 少なくとも俺はない。絶対にない。

 幼少期から数え切れないほどに人を殺し続けている人生だが、それでも人を殺すことに慣れた、なんて口が裂けても言いたくない。


 だが、世の中には人の命なんて屁とも思わないクズのような連中もいる。

 俺の目の前で腕を切り落とされ、みっともなく泣いている男もその類だ。


「よう、クソッタレ。今まで散々と他人を傷つけてきた自分が、今度は傷つけられる側になる気分はどうよ」


 俺は床に転がる別の人間の死体に突き刺さった刀を抜き、この期に及んでまだ逃げようとする男の背中に地面ごと突き刺した。


「許してくれ! 悪かった!! 俺が悪かった!!」

「俺にその権利はない」


 俺はこれまた別の死体の側に転がる拳銃を拾う。


 男の仲間は十一人、もう既にあの世行きだ。

 彼らは人攫い。

 街から人間を拉致し、大陸の組織に売りつけるという小遣い稼ぎをしていた連中だ。


 警察も極道ヤクザも、ヒーロー達でさえなかなか尻尾を掴めなかったのは、人攫いのリーダーがの異能持ちであり、証拠を残すことなく、犯行現場から逃げていたせいだ。


 だが腕を斬られ、刀で地面に縫い付けられるようにされ。


「これで逃げられるとでも言うなら逃げてみるんだな」


 俺は男の眉間目掛けて、銃を放った。

 悲鳴もなく、男の額に赤い穴が空く。


 俺は拳銃を適当に放り投げると、人攫いグループが根城にしていたこの倉庫の奥にあるコンテナの鍵を開けた。


「もう自由だ」


 コンテナの奥には、何人もの裸の女達が震えていた。


「お前達を売り捌こうとしていたクズどもは全員死んだ。そのうち警察も駆けつける。そこでじっとしてな」


 俺は女達にそう声をかけると、その場から立ち去ろうとする。

「ありがとうございます!」

 コンテナの奥にいる女の一人が、俺に向かって叫んだ。


「あなたは、ヒーローです」


 女の言葉に、俺は鼻で笑った。

 ヒーローか。俺はヒーローじゃない。

 今の世の中、そう呼ばれる連中は外に沢山いるが、俺は違う。


「俺はヒーローなんかじゃない」


 俺はマナヒコ。

 金さえ積まれれば誰だろうと殺す、ただの殺し屋だ。



『血塗れの花嫁(I WRITE MY OWN STORY , NOT YOU.)』COMING SOON ...?

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テキーラ・ウルフが死んだ。 宮塚恵一 @miyaduka3rd

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