第10話 ナーシャの激昂

☆ナーシャサイド☆


あのクソ女.....小鳥遊め。

思いながら私はイラつきながら大学病院にやって来る。

ここは勇くんが入院した場所だ。


私は怒りに満ちていた。

こんな真似をするなんて最早人間の所業ではない。

そもそも何故他人を使うのだ。


小汚いとしか言いようがない。

私は焦って行く中で病室をノックする。

すると、はい、と勇くんの声がした。

私は俯いて数秒してから開ける。


「勇くん.....」

「ああ。ナーシャか。.....どうした?」

「お見舞いだよ。.....お腹の傷は大丈夫?」

「すっかり。.....内臓に傷は付いてないらしいから」

「ゴメンね。私が油断したばかりに」

「なんでお前が謝る?.....これは俺のミスだから」


そうは言っても、と私は果物を乱暴に置く。

それからイライラしながら、あのクソ女のせいでしょ、と勇くんを見る。

勇くんは窓から外を見ながら、そうだな、と返事をする。

私は果物を見ながらイライラを抑え込む。

だがイライラが収まらない。


「イラつくのは分かる。.....だけど落ち着けナーシャ」

「勇くんは本当に優しいね。でも私は許せない。絶対に許せない。人のする真似じゃないし。他人を使うとかもう外道の象徴だね」

「だけど今キレて恨んだところでどうしようもない。だから落ち着け」

「勇くん.....」


俺も許せないのは事実だから。

だから問い詰めるつもりだよ、と苦笑した。

私はその顔を見ながら更に小鳥遊に対してイライラが募る。

だけど勇くんには全て通じている様だ。

落ち着け、と言い聞かされる。


「.....キレてもしゃーないから」

「勇くんが言うなら」

「ああ。.....俺としてはお前が笑った顔の方が好きだ」

「.....それって口説いているの?ははは」

「違うけどな。.....でもお前が俺を笑わせたり。恥じらせたりするじゃないか」

「そうだね」


そして私はりんごを手に取る。

それから果物ナイフで剥き始めた。

その姿を見ながら勇くんは窓から外を見る。

それから、恨む事が全てじゃない、とポツリと呟く。


「.....勇くん?」

「俺の人生がそうだったからな。.....アイツは犯罪者に近いけど。.....だけど.....な」

「変わらずだね。本当に」

「そうだな。変わらずだ」


私はりんごを剥いてからそのまま皿に出す。

そうしているとドアがノックされた。

そして今度は渚さんが入って来る。

その目は憔悴していた。

だが勇くんを見てから涙を浮かべ始める。


「.....ほ、本当にゴメン。高梨くん。私.....何もできなかった」

「できなかった、んじゃない。あの時はどうしようもなかったんだ」

「高梨くんは.....優しいね」


そこまで言ってから私を見ながら頭を下げて渚さんは涙をポロポロ溢す。

そして号泣し始めた。

私はその渚さんを抱きしめながら、大丈夫だよ、と言い聞かせる。

怖かっただろうにこの子も。

思いながら更に怒りが募り始めた。


「.....横島。ナーシャ。.....ありがとうな」

「何が?勇くん」

「.....お見舞いだよ。もう2日も入院しているしな。退屈だった」

「そうだね.....退院予定は?」

「明日だな。今日検査して.....異常無ければだけど」

「そうなんだね」


私はその言葉にホッとしながら渚さんをナデナデする。

本当に良い子だな、って思う。

こんなにも可愛らしいマスコットの様な。

妹にしたい気分だ。

まあ.....本当の妹は.....もう懲り懲りかな、って思うけど。


「ナーシャ。ありがとう。動けないしな俺」

「気にしないで」

「.....お前お姉さんみたいだな。.....ナーシャ」

「.....そうだね。.....まあそれは.....うん」


勇くんは、?、を浮かべる。

私は複雑な顔をしていたが首を振ってから笑顔になる。

それから、みんな。聞いて、と言う。

みんな私を見ながら、?、を浮かべた。


「りんご食べて。そしてフルーツもいっぱいだから」

「.....そうだな。横島。食ったらどうだ」

「え、え?でもそれは高梨くんの為に持ってきた.....」

「みんなで食べる方が良いの。絶対にね」

「.....じ、じゃあ貰おうかな」


そしてリスの様に食べ始める渚さん。

私はキュンとなってしまった。

可愛い.....。

思いながら私は渚さんにりんごを渡してからそのまま勇くんに渡す。

勇くんもゆっくり食べ始めて驚く。


「甘いな。このりんご」

「そうでしょ!.....私のおじいちゃんの農園で取れた果実なの」

「そうなのか。おじいちゃんか」

「そうだね。.....今度来てよ。.....おじいちゃんも喜ぶ」

「泊まりに行くよ。その時は」

「うんうん」


そうして会話をしていると渚さんが、ほ、本当だ。甘い、と笑顔になる。

私はその姿に、でしょう?、と笑顔になる。

すると勇くんが、俺はみかんが好きなんだけど。取ってくれないか?、と笑みを浮かべて柔和になった。

食べたいって申し出たならいくらでも。


「これ全部お前のおじいちゃんの?」

「土壌に全く農薬使ってない有機栽培だから」

「.....それでも凄いんだが.....」

「えへへ」


ぱ、パイナップルも作られたの.....?、と仰天しながら渚さんが聞いてくる。

私は胸を張りながら、そうだよー、とニコニコしながら回答する。

おばあちゃんとおじいちゃんと親戚が協力してね、と笑顔になりながら。

渚さんは、す、凄いなぁ。そういうの、と褒めてくれる。

何だか誇らしかった。


「ああ。本当に凄いと思うぜ。元気が出る。みかんも甘いしな」

「みかん甘い?良かった。えへへ」

「.....ちょっとはイライラが収まったか?」

「そうだね。イライラが収まったよ。.....流石は勇くんだね」

「俺は何もしてないさ。お前の腹の虫を抑える手伝いをしただけだ」

「.....」


正直こういう所が好きだ。

勇くんが好きな理由だ。

だからこそ。

この幸せは壊れてほしくない。

そう思いながら私は拳を握りしめた。

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大切にしていた彼女に裏切られありえない冤罪を被せられましたがその後に見知らぬ美少女が俺の罪を無罪に晴らしました。そしたら地に落ちた彼女が?〜今更仲良くなんて全てが遅い〜 アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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