もどかしくて、甘酸っぱくて、てぇてぇ!

高校進学で同級生になったどこか似たところのある主人公のハルとヒロインのサクラ。同じ図書委員ということもあり意気投合する。

恋愛小説を書くにあたり登場人物に感情移入できるよう、疑似恋愛をハルに持ちかけるサクラ。

互いに恋愛感情を持たない同士から始まった疑似恋愛だったが次第に本気の色が混じり始め……っとここまでは割とよくあるラブストーリー。

しかしそこにこの作者の作風の特徴ともいえる『めぐすり節』が入ることで一気に面白みが増すのが興味深いところ。

とにかくヒロインが賢くて基礎スペックが高くて、妙に行動力があって、あとかなり大変なバックグラウンドストーリーを背負っていて、常に斜め上の行動で周囲を振り回す、というのが私の定義する『めぐすり節』なわけだが、今作のヒロインもそんな感じだと思う。

のっけからハル君をジャイアントスイングばりに振り回しまくって、でもそれが全部打算に基づいた計画的な行動というあたりにそら恐ろしさも感じるが、そんなあざとい行動の行間に本当の可愛さが見え隠れしているのでヒロインに悪感情は感じず、ただ可愛いなぁもう! と目尻が下がる。

いや、自覚してないだけで好きやん! 大好きやん! いくら疑似恋愛といっても女の子は好きじゃない相手にそんなことしないでしょ!

そんな恋人ごっこでイチャイチャしながらもお互いに心の中で線を引いて好きにならないように無駄な努力している二人のもどかしくて、甘酸っぱくて、てぇてぇ恋模様。ぜひあなたも悶えてほしい。