第21話 顔もフランボワーズも真っ赤

 再びバスに乗り、連れて行って貰った所は、やはり広い道路にポツンと1軒建った割と大きなお土産物屋さん。

日本なら地方のこじんまりした道の駅みたいなところ。

 何処どこまでがこのお店の敷地なのかわからないけど、何となく広い場所にバスが停まる。

お店の前に大きなワイン樽みたいなテーブルが二つあって、まずはそこに集合させられた。

テーブルの上には、大きなお皿の上に5.6種類の果物が一口サイズに切られたり、ブドウとかフランボワーズは、房から分けられて食べやすくしてくれている。

人数より少し多い木製のピクニック用フォークと、人数より少ない普通のフォークが添えられていて、小皿はない。

もう、みんな気にせずそこから食べるようだ。

お店の人が果物などの説明をしてくれていたようだが、ちょっと離れていたしあんまり聞き取れなかったが、皆と同じようにしてれば良いや。

くらいに思っていた。

 同じテーブルになった親切なマダムのお一人が、コドオに木製のフォークは、先が丸くて挿しにくいから遠慮しないで普通のフォークにしなさい。

と教えてくれる。

コドオは、オカンには見せない大人の笑顔でお礼を言っていた。


 どれ食べよう。

と、大皿の上の果物を見定めていると、なんかお店の人が騒がしい。

どうしたのかな?

と顔を上げるとコドオの横で、初めて見る随分若くて綺麗な男女のカップルが一緒に果物を食べていた。

クリスさんが、この果物は、試食じゃなくてツアー参加者だけのものなんだよ。

みたいなことを話しかけたが、まだ二人のストレンジャーは、よく理解出来ていなかった。

同じテーブルの上品な旦那さんが、優しく説明して、やっと自分たちの間違いに気付いたようだ。

しかし、女は強い。

とりあえず女の子は、フォークに挿してた果物は、パクって食べちゃった。

男の子は赤いフランボワーズを木製のフォークに挿したまま、顔もまっかにしてツアー参加者全員の方を見ながら、知らなくてごめんなさい。

って感じできちんと謝った。

えらい子やなぁ。って感心してると最後の

『apologize《アポロジャイズ》』のあたりで、フォークからフランボワーズがポロリと落ちた。

「あぁあ」

ツアー参加者の皆が食べちゃえば良かったのにね。

って思いを込めて大きく嘆息した。

その後、全員で笑った。

うん。心の広い人ばかりで良かった。


一通り果物を食べたら、お店の中でお土産物を見る。

初日だし、オーストラリアの外国人観光客の免税は、一軒のお店で約3万円分購入しないといけないらしいので、セーブした。

このお店では、とにかくスパイスが安くて迷いに迷った挙句パプリカパウダーを買った。

いつも購入するスパイス瓶の4倍くらいありそうな容器で500円ほどなので、友人へのお土産にもお手頃だし買いたかったが、好みの問題があるのであきらめた。


 そして、このツアー中のお店全部が、私達の持っているクレジットカードが使えなかったので、伊丹空港で両替しておいて良かったと思った。








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コドオとオカンのわちゃわちゃ日記~オーストラリア旅行 加賀屋 乃梨香 @kagayanorika

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