第壱話 家のルール
「ありがとうございます!助かりました!」
「お、おぉ……そうか…?」
ブランコに一人で居た少女によって、俺が食べようと思っていたものがほぼ無くなってしまった。
水も、少女が飲んでしまったため、口を付けられなくなった。
「って、あ!すみません!私が全部…」
「いや、まぁ、良いんだけどね?」
少女が謝ってくる。
俺は首を横に振る。
「でも……」
「いや、大丈夫さ」
少女を助けられた(?)なら話は別だろう。そうだ。
俺みたいな輩と少女では命の価値が違うんだよ。自分で言ってて涙が出てきたがな。
「そうだ!家に行ったらなんか食べれるかも!」
「えっ」
家?
いま家って言った?マジで?
「いやいや、駄目でしょ」
「え?そうなんですか?」
「知らん輩を家に入れちゃダメでしょ。というか俺男だし」
「大丈夫ですよ!特に何もしないでしょ?させませんし!」
な、ならいい……待て、今なんて言った?させませんって言ったのか?
いや、しないけどねっ!!
「じゃ、行きましょう!」
「え、あっはい」
瞬間、少女が居なくなった。見回すも、居ない。というか、瞬きした瞬間で消えたんだが。
……忍者?忍者か?忍者なのか?
「あ、あぁ!すみません!悪い癖で」
「え、あっはい」
いつの間にか、隣に先程の少女が立っていた。悪い癖……?ほんとに忍者なのか、それともマジの異世界転生なのか…
少女が前を歩いたので、俺もそのあとに続いて歩き始めた。
……足速くね?
■
「ここ!」
「ご立派な、お家なことで…」
俺の目の前に立っている、家は…まるで昔の偉い人が住んでそうなドデカイ家だった。
縁側の着いている、和風な感じが漂う家…と言えばいいのか?
「さ、入って入って!」
「あ、お、お邪魔しま〜す」
家に入るため扉を開けた瞬間。
「コラァ!!阪奈ァ!!!」
「ヒェッ!?と、父さん?!」
奥から鬼のような顔をした筋肉ムキムキな男性が襖をピシャンと開けて出てきた。
察したね。ヤバい。関わっちゃダメなやつだってね。
「お、俺はここで…」
「ん?そいつは?」
「え、えっと〜」
まずい、話を振られた!なんとか逃げなかれば…ぜってぇ死ぬ!あのお父さんは娘が男性連れてきたら殺すタイプのお父さんだ!確実!絶対だろ!
「た、倒れていたところを助けて貰って…」
「何ィ?倒れたァ!?」
「お、僕は帰りますね!」
家から出るための扉を開けると!
「あら、阪奈のお友達?」
「あ、お母さん!」
阪奈と呼ばれた少女の母親が、買い物袋を手に持って立っていた。
しかも、出るのを塞ぐような感じで。
「よぉ、名前なんて言うんだ?」
肩をぽんと叩かれる。振り向くと、先程のお父さんらしき男性が。
あ、ダメなやつだこれ。地味に肩掴んでるもん。
「智室と……言います…」
「よし、智室。話をしようじゃないか」
……第2の人生、速攻で終了。
「成程…経緯はわかった」
阪奈のお父さんと、面を向かって話していた。そのお父さんの横には、阪奈のお母さんが座っていた。
俺は背筋をピンと伸ばし、正座して強ばった顔をしていた。
「そんなに緊張しなくても……?お父さん」
「お、俺か?」
そんな筋肉モリモリで怖い顔してたらそうなりますよ。とお母さんが叩く。
「私、阪奈の母親の
「う、うむ。俺は父親の
「ぼ、僕は華束智室とい、言います。以後お見知り置きを」
カタコトの日本語を喋りながら90度にお辞儀する。
「あら、丁寧な子」
じゃなきゃ殺されそうなんで!!失礼だと思ってるけど!
「して、なぜここに?」
「え、えっと…阪奈さんから食べ物を奢りたいと呼ばれまして…」
「あら。阪奈が」
半音さんがそう言う。すると、いきなり目の前にテーブルが。
「……え?え??」
「阪奈がそういうなら、奢りましょう」
「え?え?」
頭の上に?が大量に出てくる。
目の前にテーブルあったっけ?そもそも奢りましょうって…?
「うむ。時間はあるな?」
「いや、家が無いんで…」
「あら。家が…?」
「無いだと?」
そりゃいきなり言われたらそうな…
「ま、世の中物騒ですからね」
「ここで寝るか?最悪、部屋は幾つもあるからな」
…らなかったぁ!?
え?!普通そうはならんやろ!?ただ俺お菓子をあげただけやぞ!
「え?いいんですか?」
「私達の
「あぁ。手厚く迎えるのが家のルールなんでな」
……じゃ、じゃあ言葉に甘えると…するか?大丈夫か?
「あと、阪奈をよろしく頼みますよ」
「え?それってどう言う?」
半音さんは、俺にそう呟いたあと、どこかへ行ってしまった。
家にいたら忍者が入ってきて巻き込まれた! ガッツYY @gattuYY
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