第18話 どんな闇も、超新星が包み込んでくれる! 消し炭にして!

 宝珠石を取り出したキンレオ。

 大きな口で、拳ほどある石を飲み込んでいく。

 全て飲み込むと、禍々しい紫色のオーラを纏い始める。

 

「見せてやろう……。宝珠石の力……」

「隙ありぃ!」


 ケイがロケットパンチを、キンレオに放った。 

 動作中のキンレオの腹部に直撃。体を吹き飛ばした。

 その後マシンガンで、キンレオの胴体を撃ちまくる。


「演出中に攻撃ぃ!?」

「敵のペースに合わせる必要ないだろう」


 確かのその通りだ。私もケイに同意した。

 物体精製で人工衛星を作り出す。


 空からレーザーを放ち、キンレオを攻撃する。

 レーザーは天上を2つ貫通して、キンレオに。

 倒れているキンレオは、反応出来ずにまともにくらった。


「不意打ちなのに、やり過ぎだぁ!」

「メイ煩い。私達は勝たなきゃいけないのよ」


 煙の中から、人影が飛び立った。

 五体満足のキンレオが、空に向かったのだ。

 手から光線の手刀を出現させる。それは空高く伸びていた。

 キンレオが腕を振り回すと、衛星が真っ二つに斬れる。


 上空で爆発が発生し、破片が地上に振って来た。

 私とケイは咄嗟に銃を撃って、破片を撃破する。


「中々の余興だったぞ」

「嘘……。全然堪えてないわ……」


 私は体が自然と、後ろに倒れる。

 あれほどの攻撃を受けて、キンレオは無傷だ。

 先程まで銃の直撃で、確かにダメージを受けていた。

 なのに今は、マシンガンで傷1つ付ける事が出来ない。


 銃が利かないなんて……。普通の攻撃じゃダメね……。

 私の物体精製だけじゃ、勝てない。

 ならばここは、仲間の力を借りよう。

 力を合わせれば、きっとキンレオにも勝てるはずだ。


「みんな! 力を貸して! 一斉に奴を攻撃するのよ!」


 私は大砲を4つ、精製した。

 これで空中のキンレオに、攻撃が届くはずだ。


「嫌です」

「僕も大砲はネタが古すぎて……」

「結束力がねぇ! でも私も嫌です!」


 私は3人の真下に、正方形の穴を作った。

 不意を突かれた3人は、落下する。

 穴は大砲に繋がっており、3人は見事にセットされた。

 私も大砲に入り、狙いをキンレオに定める。


「まずはメイから行くわ!」

「ええ!? 一斉攻撃じゃなかったのですかぁ! と言うか……」


 私はメイが入った大砲を、発射した。


「無理無理無理! 絶対勝てない!」


 メイは涙目ながら、勇ましいくキンレオへ向かった。

 キンレオは手刀を構える。


「違うんです! サービスシーンを貴方に……」

「間に合っている!」


 キンレオは手刀を振り下ろした。

 メイは咄嗟に白刃取りをする。

 見事に攻撃を受け止める。


「おお!」

「ひええ! この後どうすれば!? 逃げたいけど、放せない」


 隣の大砲が、発射された。

 ケイが勢い良く飛び出していく。


「メイ! 今助けるぞ!」

「え? ケイさん……。このまま来たら……!」


 ケイはメイに向かって、体当たりをした。

 メイはその拍子で手を離す。

 だが吹き飛ばされた勢いが、手刀に勝った。

 2人は手刀を破壊して、キンレオに向かう。


「その程度で。我に勝てると思うな」


 キンレオは片手を突き出した。

 恐らくクロレオが使った、物体を操る術だろう。

 1度食らったケイは、その動作で術を予測した。

 飛びながらメイを持ち上げる。


「ちょっと! まさかぁ!」


 ケイはメイを投げつけた。

 キンレオは意外な行動に、面食らう。

 あの術は1人にしか、通用しない。

 どちらを防ぐべきか、悩んでいる。


「ケイ! メイ! 今援護するわ!」


 私は物体精製で作ったものを、大砲で発射した。


「援護って……。うぉ! 建物壊す重機の、鉄球が来たぁ!」


 鉄球はまずケイに直撃。メイを挟んでキンレオに向かう。

 迷っていたキンレオの隙を突いた。

 キンレオはメイに直撃して、吹き飛ぶ。


「よし! 後は私に任せて下さい!」


 フォルもまた、自ら大砲で飛び出した。

 呪文を唱えて、剣を構える。


「魔法剣! フレイムソード!」


 呪文を唱え終わると、剣に炎が纏われる。

 フォルは炎を纏った剣を、鉄球に向けて突き刺した。

 鉄球が膨張していき、表面の熱さが上がっていく。


「うぎゃあああ!」

「あぁ! ケイさんしか、苦しんでいない!」


 表面に接触しているケイが、悲鳴を上げた。


「ケイ! 今助けるわ!」


 私は3人の援護をしに、大砲から飛び出した。

 物体精製で銃を取り出して、スコープをのぞき込む。

 

「対戦車用ライフル……。発射!」


 私は空中で戦車の装甲を貫く、弾丸を放った。

 弾丸は鉄球を貫通して、キンレオに向かっていく。


「うごぉ!」

「きゃあ! 一直線だから、全員に当たるぅ!」

「うぼぉ!」


 私は続けざまに物体精製を、行った。


「更に花火を喰らえ!」


 火薬が詰まった弾を、私はキンレオに投げつけた。

 再びライフルを構えて、弾を討つ。


「た~まや~」

「うぎゃああ! 花火って近くで見ると、全然奇麗じゃないぃ!」


 キンレオとメイ達は、地面に落下した。

 大砲の近くに落下して、丁度真ん中に倒れる。

 私とフォルは着地して、3人の様子を見る。

 ほぼ白目になりながら、ケイとメイはグダっとしていた。


「2人共、大丈夫!?」


 私は治療をする為、2人に近づいた。


「はっ! 証拠隠滅!」


 私は慌てて大砲を爆発する。

 三者爆発に巻き込まれ、散り散りになっていく。


「痛たた……。生きていますか? ケイさん……」

「ああ。なんとかな……」


 ケイは頭のたんこぶを、撫でながら立ち上がった。


「何故そこに傷が!? しかも他は無傷ぅ!?」

「僕の事は良い。それより、キンレオはどうなった?」

「良くこの状況で、その台詞を言えますね……」


 私達は吹き飛ばされた、キンレオに視線を動かす。

 煙から出てきたキンレオ。吐血しながら、ローブが破れている。

 息を切らしながら、膝立ちになっていた。


「効かぬわ」

「とてもそうは見えないんだけど!?」


 アレだけの攻撃を与えても、無駄だった。

 キンレオは再び手刀を、精製した。

 剣術になれた奴の一撃を、食らいたいくはない。


「まだ終わらぬぞ……。この世界を支配するまで……」

「何故そこまでして、世界を支配したいの?」


 私にはキンレオが、支配欲に溺れているようには見えない。

 寧ろ憎悪で、突き動かされている。

 何故ならかつての私も、世界を恨んでいたからだ。


「政略結婚などと言う、つまらん理由で、私は生まれた」

「両親から、愛されなかったのかしら?」

「どちらも愛人が居てな。2人共その家族に夢中だった……」


 この様に生を受けた時点で、キンレオの役目は終わったのだろう。

 両家を繋ぐ子共。ただそれだけの理由で、生まれたのだ。

 キンレオの表情は、孤独さを感じさせる。

 それは誰からの愛を、受けなかった者の目だ。


 私と同じ……。いや、私にはケイが居た。

 ずっと隣に居た幼馴染。私の方がまだマシだろう。


「全部憎いから、支配して、ぶっ壊してやるんだ!」

「キンレオ……」


 本当の名は忘れたと言った。だが本当にそうだろうか?

 彼は捨てたかっただけではないか?

 蔑む両親が適当に付けたであろう、自分の名前を。


 もし彼にケイの様な、支えが居れば……。

 ここまでの狂気を、抱かなかったかもしれない。

 でもまだ間に合う……。私は初めて人を救いたいと、心の底から思った。


「キンレオ。貴方の狂気、私が受け止めるわ!」

「我が覇道、幾戦の力を持っても、止める事不可能なりぃ!」


 私は目を瞑って、全ての神経を集中させた。


「第6の異能……。発動するわ!」


 それは私が持つ能力の中で、最も危険なものだ。

 だから使いたくないと思っていた。

 でも使わなければならない。彼の狂気は、それほど大きいのだ。


「必殺……。宇宙の法則を乱す!」

「ええ!? そんな能力ありぃ!?」

「超新星! 創世!」


 私は太陽の様に光る球体を、上空に精製した。

 キンレオを眩い光で、包み込んでいく。


「からの! スーパーノヴァ!」


 私は超新星を爆発させた。

 膨大なエネルギーが、一気に放出される。

 強力な爆圧が、キンレオに向かって行く。

 光がキンレオを、徐々に飲み込む。


「ぐっ! こんなものに……」

「うぎゃああ!」

「うおおお!」

「2人を巻き込んでいるぅ!」


 これは私からのメッセージ。

 どんなに暗い闇でも、必ず照らす太陽がある。

 その光は貴方の心を、照らすものなのよ……。

 かつてケイがそうだったように、私も誰かの太陽になりたい。


「お前ら! 腰に力入れろ! このままじゃ、全員吹き飛ぶぞ!」

「ああ! 我が魔法剣で受け止めてみる!」


 ケイとフォルがキンレオの腰を、支えた。

 3人でスーパーノヴァの、エネルギー放出に耐えていく。


「何故だ? 何故、私を助けようとする?」

「死にたくないからだ! 今は仲間だぜ!」

「仲間だと……?」


 キンレオは仲間と言う言葉に、強く反応した。

 他の6人は部下でしかなかったのだろう。

 彼に必要なのは、隣に居てくれる存在だ。


「消し炭になりたいのか? お前の精一杯力を込めろ!」

「ぐっ……。しかし私にこれ以上の力は……」

「俺らだって、同じ条件でやってんだ! 根性見せろ!」


 キンレオはシールドを張って、スーパーノヴァを防ぐ。

 2人が強度を高めるように、キンレオの背中を押す。


「最後まで諦めるな! 自分を信じろ!」

「限界を超えた力か……。面白い! 乗った!」

「巻き込まれで、変な絆が生まれちゃってるよぉ!」


 私はバズーカを構えた。


「根性論は嫌いよ」

「ええ!?」


 バズーカを発射して、バリアを粉砕する。

 同時にスーパーノヴァが、3人を包み込んでいく。


「負けた……」


 3人は光に包まれた。

 眩い光が消えた時、白目になったケイ達が倒れている。

 威力は抑えたので、多分大丈夫だろうが……。

 私はレーザー衛星で開いた穴から、空を見上げた。


「やり過ぎた……」

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貧乏で虐げられて死んでしまった私、転生したらお嬢様でした~異世界をチート能力と銃、財力と爆破で完全に制圧いたします~ @kurekyurio

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