第16話 夢の続く

 なんか揺れている。でもね、心地良いの。ゆっくり小さく上下左右、前後。心が安らいでいる。まどろんでいる。


   あ、あれ。


 目が空いた。開いた瞳が見るのは黒いもの、髪の毛だ。短く切ってある。

 黒色の境から周りの風景が望めた。ゆぅっくりと流れている。小刻みに揺れている。

 髪の毛の生え際から2つの色が見える。肌色と、それより濃い線状の肌色。


   はっ、私、寝てたの。


 今、私は、誰かの背中にいる。おんぶされてるの。

なんで、

 で、この人は誰?

少しづつ、私が浮いてくる。起きてくる。


「お兄ぃ!」


 ダメだ。慌てると今までの呼び方に戻ってしまう。


「一孝さん」


 目の前の髪の毛の向こうから声が聞こえる。


「おっ、美鳥起きたか? おはよう」


 一孝さんが呼んでいる。

 えっ、私一孝さんの背中にいるの。おんぶされてるの!


   なんで?


 私にも判らない。覚えてないの。


 ミッチやカンナと一孝さんとプールに行ったのは覚えている。流れるプール、波のあるプール、みんなで色々と楽しんでいたんだ。楽しかったな。

 それで、えぇーとウォータースライダーで流れ落ちていったのは覚えてる。いつも出ない叫び声をあげてしまった。そうだ一孝さんがビーチフラッグで一位になってカップチケットをもらえたんだ。それで…


「良かったよ。起きてくれて。いきなり目をつぶって動かなくなっだんだよ」


 一孝さんがいうには、ウォータースライダーの後、波あるプールで満足して、もう一度流れるプールに行くと言い出して、水に足をつけた途端、動きが止まってしまったんだって。

 一孝さんも慌て慌てたって言ってる。よく見たら寝息を立てて寝てたんだって。

  

 寝顔見られたの、はずかしいよよー。可愛いかったよって言ってくれた。


 もう、頬が、そして顔が熱いよお。溶けちゃう

 

「寝てるだけでなんともなかったから。ちなみにもうじき美鳥の家だからね」


 えぇー、そんなに寝こけてたの。いやぁー。


「えっ、もうこんなとこまで。あの後どうなりました。着替えは?帰りは?」


 私は彼の背中で身じろぎする。ワタワタ慌ててしまう。


「ちょっ、ちょっと、美鳥うごかない。危ないよ」


 一孝さんの私の足を抱えている腕に力が入る。それで意識が落ち着いていった。

 

「慌てない、大丈夫だよ。それより背中に柔らかいもの当たっているんだけど」


ふふっ


 一孝さんも慌てている。どう、私のは大きくなったかな。

 昔と比べて成長してる?

貴方のために大きくなってるんだよ。きゃつ。


「押し付けてるの! 私を感じて」


「美鳥、俺で遊ばない。俺もたまらないんだから」

 ああ、幸せ。


「美鳥、着いたよ」


 幸せな時間ってすぐ過ぎちゃうのよね。

「おかえり。あんたプールで寝落ちしたんだって、ブフゥウ、小さい子供みたい」


 美華姉です。大学に入って単身下宿しているんだけど、帰省してる。それも彼氏付きで。

「ブッ」


 お返しに私も噴き出す。


「何よ」


 お姉ちゃんが不機嫌そうに唇を尖らす。私は甘い声で、


「かずぅやぁ」


 って宣う。


「やっやめてよね」


 お姉ちゃんが慌て出す。焦り出す。

 一孝さんの背も小刻みに震えている。溢れる笑いを堪えるように。

 そう、お姉ちゃん、彼の前で猫被ってるの。秘密よ。


「安心して、これで貸し借りなし。前はポーチありがとうございました。やっと言えたよ。お姉さん」


 美華姉の強張った顔が解れる。安堵した表情になって行く。

 そしてお姉ちゃんが玄関のドアを開けてくれた。私は彼に、一孝さんにおんぶされて、まま、玄関をくぐる。

「ただいま」



 楽しい一日は終わった。楽しかったな。

でも、これからも楽しい日々が続くはず。


「美鳥、花火あるからね。夜、やろう」


 姉が教えてくれた。


 ねっ



☆☆☆☆☆☆☆☆


ここでhave fan終幕です。続きは本編を待っててください。


美鳥:そういえば、寝落ちした後の着替えは?

  :ミッチとカンナがしてくれたよ。

美鳥:お恥ずかしい裸体晒したの!

  :ごっつぁんですって言ってたけど

美鳥:………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

年下幼馴染は同級生 if 夏、 have fun! @tumarun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ