パンドラの記憶【パンドラの記憶】


 深海の羽衣の物語は、これで終わりだ。わたしは、ソファで眠る娘のそばに座った。


「ねえ、ばあちゃん。わたしの羽衣は、ばあちゃんだったよ。ばあちゃんがいたから、生きてこられた。そして、この子が今の羽衣よ。」


 娘の前髪をそっと整え、ちょっとだらしない寝顔のほっぺたを、そっとなでた。


「今日が命日だから、無理をして、書き上げたのね。本当に、しょうがない子なんだから。」


 わたしは、カーテンの隙間から見える、秋の空に祖母の笑顔を重ねた。


 ばあちゃん……。わたしの笑顔も、ばあちゃんみたいかな。

 ねえ、ばあちゃん……。


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パンドラの記憶 福子 @295no3po

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