閑話休題 アルバート
第24話 小旅行
「ルーク、ララ。そろそろ飯ができるぞ」
ロイセンブルク領に入って数日。補給のために何度か町に訪れながら、目的地近くのキャンプ地までたどり着いた。
「わーい!ご飯ご飯!」
「慌てなくても、飯は逃げないぞ。ほら、好きなだけ食べな」
ララ用に用意した木の器に、一人分よそって渡す。今日のメニューはララの母直伝のシチューだ。旅立つ前にお手製のレシピ本をもらい、それ通りに作っている。ララにとっては初めての旅だ、食べ慣れたものがやはり一番だろう。母の味に近づいていればいいんだが。
「うん、美味しい!お兄ちゃん、お料理上手ね」
「はは、ありがとう。おかわりもあるからな」
ララは相変わらずよく食べた。吸血鬼は一度血を飲めば、数ヶ月は飲み食いしなくても平気だという。だがララは食べること自体を気に入っており、道中の街でも美味しいものに目がなかった。ララ、なんでも美味そうに食うんだよなぁ。ついつい、あれもこれも食べさせたくなってしまう。
そういう
「ロード、やっぱオマエ前より強くなってねぇ?この辺りの魔物、結構強いだろ?オレもいるとはいえ、苦戦してねぇなと思ってよぉ」
「ルークもそう思うか?」
ブーゲンビリアでの一件の後。吸血鬼になりかけた影響なのか、魔力量が増えたように感じる。以前より疲れにくくなったし、魔法が遠慮なく使えるし良いことずくめだ。
「ま、オレとしても。オマエが今まで以上に頼りになる、ってのは都合がいい」
「二人とも、強くてかっこいいと思う!」
「お、それは嬉しいねぇ。オマエが安心して旅が出来てるっていうなら上々だ。オレ達も頑張り甲斐があるってもんよ」
ルークはララの頭を撫でる。髪がくしゃくしゃになっても、ララは楽しそうだ。
この旅が、ララにとって楽しい思い出になるように。俺も頑張らねぇとな。
「明日は、アルバートの屋敷につけると思う。地図上だと、この森の中にあるみたいだ」
今いるキャンプ地から見える程度の距離に、森がある。ソフィアによると、アルバートはあまり住む場所を変えないらしく、ここ三百年ほどはこの森の奥に住んでいるという。近くの村人に聞いた話だと、人はほとんど入ることのない場所だとか。まぁ、吸血鬼が住んでるってなると、よほどのことがないかぎり人間は近づかないよなぁ。
「あのね、お兄ちゃん。その、アルバート?って、優しい人かな?」
「うーん、どうだろう?俺も会ったことないしなぁ」
こればかりは会ってみないとわからない。話の通じる人物だといいのだが。
「今日は、食べたら早めに寝ようか。明日に備えてな」
「うん、わかった!」
鍋の湯気が、大きな月に向かって登っていく。ララとの旅もあと少しだ。
25番目の剣 雨上鴉(鳥類) @karasu_muku14
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