退院したその夜

ゆっくりとドアが開く音

近づいてくる足音


「コンコンコン、聴こえてますか〜?」


「……ん? 患者さん、この世の終わりみたいな驚いた顔してどうしたんですか? 美人幽霊看護実習生の深夜の特別回診ですよ~いいでしょ〜」


「……ん? そうじゃなくてって? あらあら、金魚みたいに口をパクパクさせて〜それに人を指差すのはよくないですよ~」


「……(嬉しそうな笑い声)お帰りなさい。退院おめでとう」


「実は、看護師になれなかった未練ははらせたんだけど、今度は別の未練が生まれちゃったみたいなの」


「……うん。私ってずっと看護師目指して我慢してきてたでしょ。あなたと昔話をしているうちに、そう言えば遊びに恋愛にオシャレに全然人生楽しんでなかったなって思って」


「それで、あなたと一緒ならいろんなこと楽しめるじゃん、と思って憑いてきちゃいました〜」


「……いいでしょ? こんな美人幽霊看護実習生ーーじゃなくて美人幽霊彼女なんてどこにもいないよ?」


「それにやっぱり、約束を交わしたとはいえ、あなたは一人で眠れないんじゃないかとか健康的な食事を取っているのかとか、運動してるのかとか、ストレス溜まってないかとか、危ないことしてないのかとかいろいろ心配で」


「……うん、そう。深夜のこの時間帯しか会えないよ。……うーん、体に触れるのは難しいかな?」


ベッドが軋む音

布団を擦れる音

耳元に近づいて


「……でも、ここは病室じゃないからいろんなことができるよ」


笑い声

少し離れて


「とにかく、もうあなたに憑いてきちゃったから。今日からあなたの彼女として、毎日お世話になります。末永くずっとずっとよろしくね!」


「……ん? さすがに急に現れたら怖いから合図がほしい?」


「うーん、そしたら……うん、これにしよう!」


「コンコンコン、聴こえてますか〜?」

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美人看護師(幽霊)が一目惚れ〜入院したら退院まで取り憑かれてしまった話〜 フクロウ @hukurou0223

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