晩夏には死が充満していた。
ある事情から人を殺めてしまった主人公は「だいじょうぶ」と慰める彼女の声に導かれ、旅に赴く……
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海外文学などを何冊か触ってみると分かるのですが「この作品は翻訳だと多分100%を楽しめないんだろうな」という作品があります。
翻訳者の腕や文化の理解度には関係なく、その国の言語でないと味わえない雰囲気……と呼べる要素が含まれている作品です。
この作品はおそらくそれに該当します。一話目を開いた瞬間からにじみ出る情緒。漢字とひらがなが混ぜられ、陰のある雰囲気が展開されるのです。
硬い言葉選びと言い回しが十二単のように物語に纏わり、主人公の彷徨を格調高く描写しています。
この湿った雰囲気は日本語以外だと出せないのではないでしょうか。
詰まった文章はどうも……という方にこそ一読(一見?)願いたい作品です。