二
「いきましょう」
私を腕の中から解放した彼女はすっくと立ちあがり
いったい
朝日が照らす涼やかな道を、私たちは連れ立って歩きました。行き先は何処だっていい。彼女の目的地が
緩やかな坂を上った先にあるのは、訪れる機会に恵まれなかった停留所。他よりほんの少しばかり高く作られたそこにあるのは、申し訳程度に置かれた長椅子と駅名標だけでした。
やがて怪物のように白い蒸気を噴き上げた機関車が駅に滑り込み、私たちはそこに連なる客車に乗り込みました。私たちの他に乗る者はいません。先の駅から乗っていたであろう客も
ほどなくして車掌が巡回にやってきました。彼が気怠そうに「何処まで」と聞くので、私は「……、終点まで」と答えました。鈍く光る銀の
見慣れたはずの景色も、車窓を通して見ると大層美しく感じられました。秋を待ち望む稲穂は風に吹かれ、
景色を楽しんでいたのも束の間、汽車は
一転し、黒く塗りつぶされた車窓に映るのは
昨晩の
ですが、旦那様が手を振り上げたその刹那、父の顔が重なってしまったのです。酒に溺れ世の中への憎しみを私にぶつけていた、
そうして、遺体を
車窓の硝子に映った私の顔は、いつしか笑みを浮かべておりました。
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