#2 重犯罪者アイズ その①
エージェント集団「クウォロス」は、犯罪率が高い国「クウォート」にある。
前までは人口が多く、アメリカなどの主要先進国とも張り合える程のGDPを誇っていた。
だが、いつごろからか犯罪が多発するようになり、今では街の大半が犯罪者のたまり場だ。
そんな旅行を気軽にできない都市の最北端、そこにクウォロスの拠点がある。
俺たちは大急ぎで拠点に戻るなり、追加任務の完了報告をする。
あとから聞いた話だが、さっきの犯罪者はどうやら他のエージェントの管轄だったらしい。
散々元々担当していたエージェントに怒鳴られたが、彼がもらうはずだった報酬の半分を彼の上司に渡されると落ち着いた。
仕事を横取りされた気持ちは俺もわからなくはない。
「あぶねぇ……収益が得られなくなるところだった」
「エージェントはブラックだからねぇ……」
仕事を横取りしてしまったことで怒られた件だが、これを説明すれば相手に怒鳴られた理由に納得できるはずだ。
この職業は報酬制。
犯罪者には危険度があり、それぞれ危険度に応じて報酬が増える仕組み。
逆に言うと、あまり危険度の高くない任務では大した額が発生しない。
エージェントは実力至上主義だ。実力がない人間は稼ぐことができず、仕事を辞めてしまうか殉職してしまうことが大半。
エージェントは年中人手不足だ。適性検査などの厳しさもあるが、さっき挙げた理由も人手不足の原因となっている。
だから数少ないエージェントの収益源である任務を奪われてしまうのは、当然怒りを買うのだ。
俺たちはまだ入って3ヶ月だから尚更だろう。
翌日、俺とファイはいつも通り任務を受注するため、拠点へと足を運んだ。
「ア……アイズ……」
「あの重犯罪者じゃん……」
俺とファイはお互いに目配せをする。
アイズ。
「現代最強の犯罪者」と呼ばれるヤツ。
「……ということで、この件を君らに担当してほしくてね」
黒いスーツに身を包んだ俺の上司でありこの拠点の最高管理官、「O」が俺たちに言う。
本名はわからない。上層部は身バレとかしたくないんだろうな。
「待ってください、O」
ファイが反論しようとする。
「質問か?許可しよう」
「流石にボクらにこの任務は重すぎます」
「聞こう」
「ボクら、まだここに入って3ヶ月も経ってないよ。流石にこんなに沢山の重大事件を起こしてきた人を処理できる実力はないと思う」
「それに」
俺も重ねて意見を言う。
「俺らより優秀な人材はここにいっぱいいる。こういった犯罪を熟知しているのは、もっと俺たちより多くの犯罪者を処理してきた人がやるべきです」
「……君たちの言い分はわかったが」
Oは席を立つと、俺らに背を向け窓を眺める。
「君たちは思っているよりも実力が十分ついている。この2ヶ月でこの量の事件を処理できるのは他にいないだろう」
「でも……」
「もう一つ理由がある」
反論しようとしたファイを遮り、Oは話を続ける。
「君たちに知って欲しいことがある。君たちの持つ能力、その“希少性”を」
そう呟くように言った彼は、ゆっくりとその全貌を話し始めた。
エージェント二人の殲滅作戦 プニッチのGWL(グッドライトライフ) @punicci_gamer
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