真夜中に綴る
山白山羊
パーキングエリア
真夜中の高速道路は走る車も少なく、気持ちとは対照的に快適で静かなドライブだった。休憩に立ち寄ったパーキングエリアは、自動販売機の光だけが辺りを照らしている。
缶コーヒーを片手に辺りをうろうろと休憩をしていると、ベンチの近くで立ち止まっている若い男に目が止まった。大学生くらいだろうか。リュックサックを足元に置いて、遠目では見えないがダンボールを掲げているようだ。
こんな夜中にめずらしい。おそらくどこかへ向かう途中で車が捕まらなかったんだろう。普段なら気にも留めないところだが、声をかけてみることにした。
「夜遅くなのに、どこまで行かれるんですか?」
「広島です。どうしても今日中に向かいたかったんですが、こんな時間になってしまって。いまどきヒッチハイクなんて乗せてくれる人も少ないですね」
広島なら途中まで乗せることができそうだ。
「途中までなら構いませんよ。私は岡山まで向かうところでしたので」
「本当ですか?ぜひお願いしたいです」
彼は嬉しそうに御礼を言い、私の後をついてきた。
「幼馴染にサプライズでお祝いする予定だったんです。だから本当は今日のうちに到着したかったんですが」
私を安心させるためだろうか。車内ではヒッチハイクの理由を私に楽しそうに話してくれた。
「けど、急なサプライズって迷惑にならないですか?」
言い終えた後にしまったと申し訳ない気持ちになったが、彼は何も気にしていないようだ。
「大丈夫ですよ。きっと彼はそれも含めて再会を喜んでくれると思うんです」
本当に楽しそうに笑っている顔が印象的だった。
彼とは岡山の大きなサービスエリアで分かれることになった。
「喜んでくれるといいですね」
「はい。ありがとうございました」
リュックサックを背負った彼は、私に大きくお辞儀をして去っていった。気持ちのいい挨拶に彼の人の良さがにじみ出ていると感じた。
どうしても参加しほしいと頼まれていた同窓会は明日だった。学生時代によく聞いていた音楽を流しながら、残りの道を走ることにしよう。
街も近づき、走る車も増えてきているようだ。
真夜中に綴る 山白山羊 @yamashiroyagi
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