エピローグ
まえがき
ごめん、すっかり忘れていた。
長らく相手、本小説がどんなのか忘れた人ごめん。忘れた人はちょっと一章のエピローグ確認してから読んで欲しかったりするかもしれない。
そっちの方がわかりやすいと思う。
■■■■■
一柱の神がいた。
この世界の誕生より世界をを見守り、管理し続ける神を認識した初めての存在たる人類は神を祀り、信仰心という愛を神へと捧げた。
そんな己を愛する人類に対して神たる彼女もまた愛を返した。
だが、人と神の相思相愛は崩れることとなる。
かつては当然のように神の存在を認知していた人間もいつしか神の存在を認識出来なくなり、神はただの神話へと成り果て、ついには無き者となった。
世界の神たる彼女を祀る宗教は廃れ、人々の作った偽りの神が祀られる時代となった。
人から裏切られ、自分が忘れられ、他の神が信じられた。
それでも彼女は人類を愛した。
己を愛し、祀ってくれた人類のことを想い、その子孫たる人類を愛し続けた。
その果てで。
『貴方は誰ぇ?』
生まれながらに自分と同じような雰囲気を持った人間。
自分を認識してくれる人間が誕生した。
彼女は歓喜した。孤独の世界に生きていた彼女は再び己を認識し、愛してくれる存在の誕生に歓喜し、悟る。
自分が人類を愛し続けていたのはこれを待っていたのだと。
彼女は己を理解し、己と言葉を交わす人類を愛して愛でて依存した。
『……なんで?』
だが、彼女は裏切られた。
その少年はこの世界の本当の神である彼女を祀る宗教を無視し、人々の作った偽りの神を祀る宗教の信者が一人となった。
裏切られた、裏切られた、裏切られた。
激しい愛はそのまま激しい憎悪となった。
「ははははははは!」
自分の愛を裏切った人間の心臓を、リンクの心臓を貫いた。
これが裏切り続けた人類への最初の審判だ。次は全人類だ。世界の主たる神を愚弄し続けたその罪を精算する。
人類を滅ぼしてやる。
神たる彼女はほの暗い感情を宿して笑う。
「……ふっ」
それに対して───リンクという名をとうに捨てた少年、ノーネームは優しく神たる彼女を抱きしめる。
「ようやく、触れた」
「えっ……?」
どこまでも温かいノーネームの言葉が耳を打ち、徐々に冷たくなっていくノーネームの体温がダイレクトに神たる彼女へと伝わる。
「ねぇ、知っている?人の愛情表現の一つにぎゅっと抱きしめるというものがあるんだよ。どう?温かい?」
神たる彼女を
「……愛、する?な、何を……ッ言って、リンクは、私を裏切って……あの悍ましき教会の……ッ!」
「僕にとっての神は貴方だけだよ」
「……嘘だ」
「嘘じゃないよ。神が見える僕が間違えるわけがないでしょう?あの教会に身を落としているのはそれが仕事だからで、偽りの神への信仰心なんてないよ」
「……嘘だ」
神たる彼女が震える。
憎悪によって冷たく閉ざされた神たる彼女の心がノーネームより伝わる温かさで徐々に溶かされ……神たる彼女の心を震わせる。
「嘘だッ!!!」
「嘘じゃないよ、愛している……だからぎゅーっと」
絶叫する神たる彼女をノーネームはどこまでも優しく抱きしめる。
「ごめんね?勘違いされるようなことをして、ずっと伝えたかったの。僕は貴方をずっと愛しているって」
「嘘だ……」
神たる彼女は理解した。
「こうして抱きしめてあげたかった。愛の温かさを教えてあげたかった」
神たる彼女は理解した。
「遅くなってごめんねぇ?神様」
神たる彼女は理解し、溢れた。
ノーネームからの愛に包まれ、愛を理解し、憎悪が解けて愛が溢れた。
誰よりも愛情深い神たる彼女の愛が一気にすべて。
「……ぁぁぁぁああああああああ!!!」
神たる彼女の瞳に涙が浮かび、彼を抱き返そうとして───気づく。
己の手がノーネームの心臓を貫いていることを。
「……ぁ」
「ねぇ、神様。僕はね、みんなを愛しているんだ。神様も、この世界に生きるいろんな人たちも」
「……待って」
「僕は、多分もう死ぬから。僕の代わりに神様がみんなを愛してあげてほしいな」
「……待って」
神たる彼女は震えながらノーネームの死をなかったことにするべく『神の顕現』を発動しようとし───失敗する。
「ありがとう……でも、僕は良いから。もう満足出来たから」
穏やかな笑顔を浮かべるノーネームは背中へと回していた手を持ち上げて神たる彼女の頬へと触れ、その口角を上げさせる。
「笑って、神様。そしてみんなを愛してあげて───」
光。
人の身でありながらイレギュラー的に神の力を宿して生まれたノーネームは死体すら残すことなく、神たる彼女の願いを無視して光となってその存在を消す。
何も残すことなく忽然と、ただ一つの願いを神たる彼女に告げて。
「……ぁ、あ、あぁぁぁぁぁぁ」
神たる彼女は膝をついて雨のような涙を流しながら、号哭を上げる。
己の行為に後悔し、己の死も恋い焦がれ、それでもなおノーネームの最後の願いが神たる彼女を縛り付けていた。
生まれたその時より死と共に生き、死に慣れたが故に大切な人を失う辛さを忘れ、己の命にさえ価値を持たなくなっていたノーネームは一人勝手にすべてを残して自己満足で死んでいく。
「あぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!」
ノーネームは死んだ。
神たる彼女に最大級の呪いを吹き込んで。
■■■■■
激しい雨が振り付け、雷までもが落ちるような天気の中。
「んっ?」
出かけていったノーネームを学園で待っているサーシャは突然、胸騒ぎを感じて視線を持ち上げる。
「……気のせいかな?」
だが、サーシャが視線を上げてもあるのは雨に打たれる窓だけ。
自分を打った胸騒ぎを気の所為であると断じたサーシャは再び視線を落とす。
「ノーン君、早く帰ってこないかなぁ?」
ノーネームの好物であるカレーをキッチンで作りながらサーシャは彼を待ち続けるのだった────どこまでも。
婚活に心を燃やす学園の劣等生はその実、裏の世界に名を轟かす世界最強です!~自分を落ちこぼれだと罵る血統主義の王侯貴族を蹂躙する一人の最強はナチュラルに表社会で無双する~ リヒト @ninnjyasuraimu
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