第3話 勧誘2

退屈だった一日の授業が終わり、待ちに待った放課後になる。

楽しみがあるときに限って時間の進みが遅く感じるのはまったくもって不思議だな…


授業が終わり次第クラスメイト達は帰宅する準備を始めたり、部活に行くのか走り去っていったり…

生徒が行方不明になった事件があったという割には、いつも通りの風景すぎて少し気味も悪く感じる。


俺も机の上を片付けてカバンの中身を整理していると、勇気と高山が俺の席まで迎えに来た。


「涼真~、見学行こうぜェ!」

「おう、今準備するから待ってくれ。」


勇気はすでに『楽しみすぎて張り切っています!!!』と言わんばかりのテンションだ。よほど楽しみだったらしい。高山もそれにつられてわくわくしているようだ。


―そういえば。ふと浮かんだ質問を勇気に投げかける。

「ずっと聞きたかったんだがなんでも部って旧校舎で活動してるんだったよな?」

「ああ、そうだよ。それがどうかしたのか?」


この学校には職員室や実験室などがある『特別棟』、生徒たちの教室がある『教室棟』、体育や集会などを行う『体育館』、そして現在は様々な要因で利用されていない『旧校舎』の4つがある。そして、これから向かうであろう旧校舎にもちょっとした七不思議的な話があるのだ。


『旧校舎にはお化けやら怪物やらが出る。入ったら最後、よくない目に逢う。』

なんていう話がある。実際、同級生にもの被害にあっているやつ(仮称A君)がいる。A君は放課後に『ちょっと肝試し行ってくるわ!』と言って行方が分からなくなり、大けがをして気絶しているのを後日発見されるというのがあってからもともとあった噂に拍車がかかり、それからほとんどの生徒は旧校舎に近づかないという。


俺はその後、興味本位で彼に何があったのか聞いたものの、なにも知らないの一点張りで詳しいことは聞き出せなかった。


「旧校舎ってなんか怖いうわさあるよね。それって大丈夫なのかな?」

俺が若干言いよどんでいると、何かを感じ取ったのか高山が話しだした。


「大丈夫だと思うぞ?そんなお化けなんかいるわけないと思うし、なんかあっても…。まぁ、心配するほどのことでもないから安心して大丈夫だと思うぞ。」

「だ、だよな!お化けなんて出るわけねえよな!」

「…ははぁ、さては涼真君ビビってるなぁ?らしくないなぁ?」


やいやい、と勇気につつかれる。べ、別に俺お化けが怖いわけじゃないんだからねっ!

…まぁ、本当に怖くはないのだが。


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数分行くと目標の建物が見えてくる。俗に言う『いわくつき』、と表現するには似合わない、きれいな雰囲気の建物だ。


(…だけど、自分から進んで足を踏み入れようと思う場所ではない。

なぜかは…わからないんだけどな。)


俺たちは下駄箱で上履きに履き替えて、勇気についていく。

『なんでも部』の部室までは勇気が案内してくれることになっている。まあ、勇気以外は場所を知らないんだけどな。


「勇気、部室ってどこにあるんだ?」

「…二階にあるぜ。ただ引かないでほしいんだけど…ちょっとアレでな…」


(アレって?)


そんな変なものでもあるのか?と考えてるうちにそれらしき部屋にたどり着いた。

勇気が勢いよくドアを開けて中に入る。


「来たよ姉貴!ってまたそんな変な格好して!」


勇気のセリフに合わせて俺も部屋に入ってみる。まったく思春期真っ盛りの男子高生の前で『アレな格好のお姉さん』だと?気になるじゃないか!!

だがしかし、実際は想像にある『アレな格好』とは全く違った。


パーティーグッズでよくあるような、丸メガネに鼻と髭が付いているヤツを掛けている腕組お姉さんの姿がそこにはあった。確かに『アレな格好』ではあるな…。ちっ


「いらっしゃい~。ようこそ我がなんでも部へ!紅茶にする?コーヒーにする?そ・れ・と・も…」

「姉貴、茶番はいいから。まじでやめて、ほんとにやめて。」


この人は勇気のお姉さんで今上優芽いまがみゆめさんだ。小さいころに何度か勇気の家に遊びに行ったこともあり、お姉さんとは面識があったはずだが…

こんな感じの人だったイメージはない。むしろもっと清楚系な感じだったような気がするんだが?


なんだか勇気がかわいそうだ。多分俺も海に人前でこんなことされたらちょっと恥ずかしい。人前じゃなかったらいいかもしれないがな。


「ど、どうも。ご無沙汰してます。涼真です。」

「優芽さん、お久しぶりですね!」


優芽さんは俺たちの顔を見るなりニッコニコになって話し出した。


「おうおう、お久しぶりだねぇお二人とも!元気にしてたかな?

そんじゃ改めまして、なんでも部へようこそ!私がただ一人の部員にして部長の優芽ちゃんだよ!よろしくね?」

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ドリーム・カタルシス 杉 日彩 @hiiro_sugi3

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