第3話 ビーチと女神とラベンダー。
(波の音とうみねこの鳴く声で目覚める)
「(後頭部の方から凛とした声)…目覚めましたか。動かないで下さいね」
(背中や肩に何かを塗りつけられる音)
「日焼け止めです。水着焼けのアンバランスさを神は好みませんから…っしょ。ものはついでにマッサージもしてしまいますか」
(トントントンとリズミカルに肩や背中を叩かれる)
「痒いところはありませんか? (少し楽しそうに)…マッサージの時、人の子らはこの台詞を導かれるように発していますが…何故だか私も言いたくなってしまいました♪」
(左耳へ囁く声)
「なんだか物足りないですね。人の子もそうでしょう? 頭皮も♪ マッサージ、していきますね♪」
(頭皮が揉み込まれる音)
「フフフ♪ ん、さっきまでのフランクで適当な態度は良いのか? アカシックレコードを眺めて気付いたのです。癒しに重要な要素は陰・陽のエネルギー、静・動の調和、万象の呼吸を感じる事———(少しだけ砕けた感じ)つまり、自然体である事…ですね」
「(落ち着くが楽しそうな感じのが凛とした声音に加わる)癒しを与えようという者が堅苦しく身構えていては相手を安らがせようなどと笑止千万…だから自然体でいるのです」
「(少し戸惑った感じ)え? さっきまでの方が自然な様に感じた…ですか? そう…かしら。君達の時代の若い子達を精一杯真似ただけのつもりだったのだけど(少し悲しそう切なさを感じる感じ)」
(マッサージが終わり神の吐息が右耳に掛かる)
「(囁き声)先程から見ていて分かったのですが、人の子よ。貴方は耳元で囁かれたり吐息を掛けられると身体がピクピクと震えますね…(悪戯をする猫の様な声音)耳を揉まれたりしてしまったらどうなるのでしょうね?」
「ずっとうつ伏せで疲れたでしょう。神の膝枕へ頭を預けなさい」
(ブルーシートがクシャクシャと鳴る音)
「…よろしい。何だか人の子の頭を乗せている方がしっくり来ますね♪」
(顔の前で手と手がオイルを馴染ませる水音)
「良い香りでしょう? 神前に備えられた物から塩梅良い花のモノを選びました。ただの潤滑油ではつまらないですから…(段々と水音が両耳を覆っていく)では、いきますよ?」
(じんわり両耳が包まれる→解放→包まれるを何度か繰り返す)
「面白いくらいに目がフニャフニャになっていきますね♪ こんなに楽しいのはいつ振りでしょう。(左耳に囁く声)もしかしたら初めてかも…しれません」
「次は輪郭をなぞるように…」
(刻む様に両耳の輪郭をなぞられていく音)
「〜♪」
(暫く潮騒と耳を撫でられる音と神の鼻唄だけが続く)
「彼女とイチャイチャしていた時の事を思い出す…ですか? ラベンダーの香りがそうさせるのでしょう。プルースト効果、という奴です。それとも…(右耳に囁く声)私が彼女と重なりましたか? フフフ、冗談です。(どこか悲しげな声)神は孤独…ですから」
(突然耳の穴をダイレクトに指がゾリゾリと侵入する音)
「まだ続けさせて下さい…物足りない気分なのです♪耳の穴の周りをグルグルとしたり…」
(耳の穴の周りを指がクルクルと撫でる)
「耳の中を直接指で撫ぜたり…」
(耳の中を指が撫で回す音)
「(楽しそうな囁き声)あらあら♪ そんなに蕩けられると神も嬉しいです。(人の心がなさそうな仮面の探検者の様な声音で)君はカワイイですね、人の子」
(暫くして耳が解放される)
「こんなところでしょうか。最後に」
(タオルで耳についたオイルを擦る音)
「オイルに塗れた耳をしっかりと拭いてしまいますね♪ (溜息混じりに)何だか名残りおしいです」
「…はい? ずっと1人ぼっちなのか? えぇ、世界に生まれ落ちたその時から永劫1人ぼっちですよ」
(動揺する息遣い)
「寂しくないか…ですか」
(呟く弱々しい声)
「寂しいに決まってるじゃないですか」
異世界転生させたいなら俺を癒やしてからにして貰おう。 溶くアメンドウ @47amygdala
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