第4話 異世界転生


 毎日、毎日、変わらない日常。学校からの帰り道を、ぼうっとして歩いていた。

(毎日、ガッコ行って、勉強して。つまんないよな。この先もずっとそうなんだろうな。この先が大学ンなって、会社になって。行き先が変わるだけだよな。

なんかさ、ラノベみたいなさ、異世界に行くとかさあ。なんかいつもと違う、面白いことでも起きないかな)



「その夢、叶えて差し上げましょうか」


 その声が聞こえるとともに、いつの間にか自分は、真っ白い空間にいた。目の前には、黒装束の男性が立っている。


「キター! 本当にあるんだ!

異世界に行ける! 女神様でないのは残念だけどね。色々なパターンがあるよね」

少年は、男の言葉をあまり聞いていなかった。何も無い、白い空間を興味深げに辺りをキョロキョロと見回している。


「異世界に行く事、それがあなたの望みですか? 」


「異世界が俺を呼んでるんでしょ。交通事故も魔法陣もなかったけど、これから剣と魔法の世界に行けるんでしょう」

少年は捲し立てる。


「どんなスキルをくれるの? 俺一人しか居ないから、俺が勇者だよね。無限収納や異世界言語、鑑定なんかは、基本だよね。

全魔法とかも良いなあ。あと、剣術とか武術は、達人レベルになれると良いな」


ワクワクしながら、少年は話し続ける。

「あと、めっちゃかわいい女の子がいると良いな」

男性は、少年の話を熱心に聞いている。


「対価は、あなたの寿命になります。すべて叶えてしまって、よろしいのですか? 」


「え、この世界の寿命と引き換えなの。そういえば、俺、事故にもあってないし、病気でもなかったもんな。

そういうのもなんかあったな。じゃあ、向こうで生まれ変わりかな。いいよ、全部叶えて。やっぱり、戦うのに力がないと駄目じゃん」


「よろしいのですね。わかりました」

黒装束の男性は、妖艶な笑顔を浮かべてみせた。神様ってやっぱり美しいんだな、と少年は思った。ラノベのようにポンコツ女神様も捨てがたいけど、、とも。


少年は、そういえばと言うように、別れ際に聞いてきた。

「神様、あなたの名前を教えてくれませんかね? 」

「初めて名前を聞かれましたね。私の名は、夢魔と申します」

「へー、ムマ様ていうんだ。じゃあね」

(初特典で、なんかつかないかな)


「良い旅を」


 少年は召喚の間に立った。

美しい姫君が迎えてくれた。威厳ある王に、

「勇者よ、この世界を脅かす魔王を退治して欲しい」

とお願いをされた。

(くうぅ、こう来なくっちゃ)

聖女である王女と二人、旅立つことになった。まずは、聖剣を求めて聖地へと赴き、岩に刺さって誰にも抜けないと言われていた剣を抜いた。

「やはり、貴方様は神が遣わせた聖なる勇者様です」

姫君が頬を染めて、彼を見つめてくれた。


少年は、ムマという名の神を知らないか王女に訪ねたが

「存じ上げませんわ」

そう言われた。

(ふーん。封じられたとか、忘れられた神様なのかな)

結局の所、そう思っただけであまり拘らなかった。


(必要なら、向こうからまたなんか言ってくるかな。

もしくは、それ用のイベントとかあるかも)



そして、剣聖と言われる美少女と出会い、彼女は旅の仲間として加わった。

旅の途中で、古代竜エンシェントドラゴンを助けて、彼女も仲間に加わった。日常では人型となり、竜は幼女の姿をとっている。


魔物や魔王軍で困っている町や村を救い、魔物たちを倒し、レベルを上げ、旅は続く。


続くはずだった。



突然、目の前が暗くなる。まだ、魔王の足下にも及んでないのに。何故だ。

意識が、プツンッと途切れた。




路上で、一人の男子高校生が下校途中に突然倒れ、周りは騒然となった。

心不全であったという。




「おやおや、途中で寿命が尽きましたか。そうなりますよね。

この世界でない場所に赴き、自分自身とはかけ離れた能力を望まれたのですから。


いえ、これでもよく持った方ではないのですか。長生きできる方だったのですね。

それなりに楽しませていただきました」

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うたかたの夢 凰 百花 @ootori-momo

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