第10話
「機会があれば……違うかタイミングがあれば、しようかなとは思っているよ……」
僕はおかしなことも変なことも言っていない。だけそ、何故か君には火がついた。
「えー! いついつ、いつするの? 告白する日教えて! 私ちゃんと応援するから!」
一度火のついてしまった君の好奇心は、油に火をつけた時くらい厄介で、水のように簡単に言い表せるものでは、対処ができないのであった。
「まだ何も決めてないよ。青葉のように簡単に告白できないし、僕には告白する勇気もないんだ」
僕は励ましの言葉を求めていたけど、君は何故か怒っていた様子だった。
「健! それはダメだよ! 青春は今この時しかないんだよ! 私たちの夏はもう片手で数えられるだけしかないんだよ! 今告白しなくてどうするの! 今告白しないと、一生後悔するよ!」
君の言葉は何も間違っていない。現に僕はとっくに後悔している。もっと早く君に告白していればって。だけど、前にも語ったけど、君との日々が失われるのが怖いんだ。振られることが分かっているのに僕は告白はできない。
「心配してくれてありがと。でも、僕のことは大丈夫だよ。メッセージのやり取りができる日々が僕には楽しいから。それに僕には無理なんだ……」
君はさらに怒ったのか、頬をふぐのように膨らませていた。
「絶対に違うもん! 付き合ってからの方が絶対に楽しいに決まっているもん! 何で分からないの!」
前にも似たような会話をしたような気がするけど、僕の気持ちはあの時からずっと、何も変わらない。もちろん君の言っている意味もちゃんと理解している。僕だって付き合ってからの方が楽しいと思うよ。もし君と付き合うことができたらって。それは僕にとってどれだけ楽しい日々になるか。多分、世界が今以上にもっと輝いて見えて、いつもの帰り道がいつも以上に楽しくて、一緒に勉強する機会も今以上に増えて、くだらない会話を今以上に共有して、休日は今よりもっとお出かけをする。そんな未来が訪れたらと、何回も何回も妄想したよ。だけど、そんな未来は絶対に訪れない。君にとっての僕は、所詮ただの幼馴染だから。だから、僕は悪いことだとわかっていても願ってしまう。いつか君が、今好きな人のことを諦めるように、君が僕という存在に気づきますようにと。
「青葉。乾杯しよっか」
「え? 何で?」
「だって今日は、青葉の十回目の振られた記念日だよ」
「何でそんなの数えているの!」
僕は笑って誤魔化した。
君の想いにはいつも完敗だ。そんな僕の君への想いに乾杯!
君への想いに乾杯 倉木元貴 @krkmttk-0715
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