第9話

 あれから三ヶ月経って、君はまた無謀な戦いを挑んでいた。振られるのは分かりきっているから、僕は自動販売機で今度は君の好きなリンゴジュースを買った。君はリンゴジュースにうるさく、果汁が十パーセントのジュースは嫌がる。幸いにもここの自動販売機は、果汁が百パーセントのジュースだ。そのためかここのジュースは君のお気に入り。今回は僕も同じのを買った。

 君を待つこと十分少々。また瞼を腫らした君は笑顔を無理やり作りながら僕の元にやって来た。

 

「また振られちゃったよ……」

 

 君も進展がないようだ。僕も同じように三ヶ月前から何も変わっていない。

 

「お疲れ様。はい、これ、君のお気に入りのリンゴジュース」

 

「毎度毎度ありがとう」

 

「青葉に頼られるのは僕も嬉しいし、そんなこと気にしないでよ。幼馴染じゃん」

 

「ありがと〜」

 

「君が遅かったからまた温くなってしまったけど、リンゴジュースは温くても美味しんだよね」

 

 君は大きく頷いた。

 

「うん! もちろんだよ! 温めても美味しんだよ。健も今度やってみて!」

 

「もう少し寒くなったら試してみる」

 

 こうやって茶化すように違う話をすることしかできない。

 

「今日こそは大丈夫な気がしたのに、何でだろうかダメだったよ。」

  

 訊き出せない僕に、君は一人でに語り出した。

 

「相手が悪いから仕方ないよ。僕は青葉はそこまで悪くないと思っているけど、分からない人には分からないよ……」

 

 攻めたことを言ってみるも、君の反応はいつも通りの普通な様子だった。

 

「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ。健は本当に優しいね!」

 

 求めていた言葉と違っても、僕は君からの言葉なら何だって嬉しい。あ、ちなみにもちろんだけど、否定的な言葉を除くだぞ。

 

「ねえ、青葉?」

 

「どうしたの?」

 

「岩佐に何回も振られているけど、まだまだ岩佐に告白するの?」

 

 唐突な僕の質問に君は困惑していた。

 

「えっと、だから……い、岩佐は諦めて次の恋を探すとかしないのかなって思って……」

 

 訊き直すと君は即答した。

 

「うん。それはないかな。たとえ、岩佐君に何度振られても、何回も告白していればいつか付き合えるかもしれないでしょ? その可能性に賭けているんだ」

 

 どうにかして諦めるように話を進めたい僕だったけど、言い返す言葉も掛ける言葉も何一つ思い浮かばなかった。

 

「ねえ、健?」

 

「どうしたの?」

 

 今度は君が僕に質問を仕掛けた。

 

「私の話はもういいからさ、健の話聞かせてよ。健は好きな人には告白しないの?」

 

 唐突に質問をした僕に君は得意の唐突で返す。

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