投票結果
「彼に裏社会を教えるなんてわたしには無理だったみたい」
「そっか、逃がしたんだね。あの上位ランクだった狩猟家が狐狩りを放棄するなんて……この先どうやって生きてくつもり?」
「無職になって見えざる玉座にでも座るわ」
そう返してあげるとマスコットは大笑いしてくれた。そこまで面白いことを言ったつもりじゃないのだけど、よく考えてみれば普通の特異人からしたらアホらしい返答だ。わたしは特異人の中でも普通じゃなかったから、マスコットのような共同体意識の枠に収まらないようだ。
「ごめんなさいね、笑わせるつもりは一切ない。わたしは本気で言っているの」
「そうなんだ。じゃあブレインを殺さないとね」
「……なるほど、ブレインを削除した報酬か」
「正解。イヴィル・ハンティング史上類を見ない最高の報酬。
素晴らしいわね。ほんと、どうでもいいような素晴らしさだと思う。
国を挙げての賭け事なんてばかばかしくてつまらない。どうせ自国のトップに賭けるのが目に見えているのだし、開発途上国はお零れに与ろうと他国のトップに賭けさせてもらう。そういうわけで、現時点で完成体連中か
と丁度いいところで、公共スクリーンに参加者リストの投票結果が表示された。
普段の派手さに加えて一番目立つように表示されていたのは、わたしのよく知っている女。
「完成体でもないクイーンが投票一位獲得か……あの女が個人で参加するとこ初めて見た」
「投票結果は必然だよ。スペシャルの中でもさらにスペシャルな能力を有していない限り、クイーンの前じゃ完成体でも抵抗できない。世界的に見てもクイーンと真っ向勝負ができるのはクライテリオンしかいないからね」
ハンデなしでクイーンと戦えるのはクライテリオンだけ、そのクライテリオンは参加者ではなく傍観者……今日のイヴィル・ハンティングは偶然か必然か。
と、わたしは秘密権力本部での会話を思いだす。
(若き乙女は異端者を削除するために動いていた。増え続ける異端者を殺す毎日、その繰り返される日々に刺激を求めて、若き乙女はいつからか他人の不幸を蜜として啜るようになった。女王と王……文法的には女王を殺せば王とふたりきりになれるけど、若き乙女は王との心中を願っている)
今になってあの老人たちの言葉を理解するとは……齢二十四にしてわたしも老人の仲間入りしてしまったようだ。元から古臭さはあったけど改めてそう感じる。
裏社会へようこそ、もちろん競技はヒト狩りです―旧劇 笑満史 @emishi222
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