第7話 決着 視点副騎士団長

「聖神騎士団長、討ち死に!」

その声は突然聞こえた。

総大将が戦死した?

兵達に動揺が奔る。


確かに敵の高機動ゴーレムが前衛を蹴散らし、そこにリザードマン傭兵達が切込みをかけていた。

しかし仮にも、こちらの総大将。

周りには精兵を配していたはずだ。


「聖神団長の首だ!」

リザードマンの槍の先に、あの女の首が掲げられている。

しかし、所詮はお飾りの総大将。

我らはまだ戦えるはずだ。


だが、私の願望に反して兵は下がり始めていた。

「はずだ」

で、戦は出来ない。


「押し出すんだよ!」

再び少女の、魔王の声が響き、我らが軍は崩れた。


「儂の隊が殿しんがりを務める。後は任せた。」

騎士団長が供回りを従え魔王軍に最後の突撃をかける。


「弓箭兵、射掛けるんだよ!奴らを生きて帰しちゃダメなんだよ。」

馬を駆る後方から声が聞こえる。

まだ幼い少女の声なのに耳から離れない。


隣にいた騎士仲間がまた1人射抜かれ落馬した。

「引け!引け!」

閣下が血で贖った僅かな時間で兵を纏め戦場を離脱する。


人間どうしの戦なら貴族、王族は捕虜にし、身代金を取る。

だが魔族との戦は殲滅戦だ。

相手は基本討ち取る。

たまたま捕虜にならない限り、身代金交渉はない。


離脱した戦場から、どうやって自領に帰還したかは覚えていない。

ただ、閣下は戦死なされ、騎士団領に帰り着いた騎士と兵は半分に過ぎなかった。


幼き魔王は名を成した。

我らは敗れたのだ……。



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合戦  弓納持水面 @yuminaduki

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